平成30年度は次の3点について取り組んだ。 第1に、2017年度に実施した第8回青少年の性行動全国調査データの基礎分析とその成果報告である。第8回調査では、青少年の性行動の不活発化がさらに進行し、特に女子でその傾向が著しいことが明らかとなった。そして、これによって性行動における性差も拡大していることはきわめて重要な知見である。 第2に、若年・壮年層の貧困問題について探索的に研究枠組みを整理してきた。具体的には2000年代、2010年代において日本の若年・壮年層が直面してきた貧困の実態とその背景、および貧困がもたらすライフチャンスの格差について、パネル調査データを用いて人々の変化に着目しながら考察するというものである。貧困状態への突入と脱出の状況について記述的な分析を行ったうえで、どのような人が新たに貧困状態へ突入していくのか、また、どのような人が貧困状態から抜け出すことができるのかを明らかにし、性別、年齢、学歴、働き方、ライフイベント(廃業、失業、親の死など)等の要因の影響を考察した。 第3に、戦後日本社会における離家現象のメカニズムについて、離家の経験年齢と出身階層の影響の相互作用について検討するモデルを想定し、分析を行った。 第2、3の点については、令和元年度中に研究成果として公表する予定である。 3年の研究期間全体の計画に照らし合わせると、青少年の性行動に関する研究は当初の想定以上に研究成果を出すことができた。一方で、先の第2、3の点に代表される社会経済的不平等とライフイベントの関連については、当初のスケジュールよりも研究が遅れ、査読付き論文を投稿することができなかった。引き続き、これらのテーマについて研究を進めていくつもりである。
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