研究課題/領域番号 |
16K17241
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
前田 豊 立教大学, 社会情報教育研究センター, 助教 (50637303)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 社会学 / 留学生 / 帰国 / 選択バイアス |
研究実績の概要 |
本研究課題では,日本の教育機関を修了した留学生が,日本に就労したのちにどのようなプロセスを経て帰国に至るのかを,とくに職業移動と企業が実施する施策の関連から,実証的にアプローチすることを目的とし,研究年度2年目にあたる当該年度は,残留/帰国に関わる選択バイアスに適切にアプローチする推定法の検討を行った. 残留/帰国の意思決定にアプローチする手法としては,残留/帰国を二値の従属変数とする離散選択モデルが適切であると考えられる.しかし,1時点の調査データでは,残留/帰国のどちらかの値しか取りえないデータに制限されるため,最尤法では適切に係数を推定することができない.そこで当該年度は,この問題に対して,Steinberg and Cardell,およびTang, Little and Raghunathaが提唱した疑似尤度関数によるアプローチの適用可能性を検討した.これらの方法は,独立変数が観察されているという条件のもと,片方の従属変数のみの値が観察されているデータと,従属変数が完全に欠測しているデータの2つを用いることで,離散選択モデルの係数を推定する方法である. 数値シミュレーションの結果,母集団における帰国シェアが既知であるという条件のもと,小規模のサンプルサイズの場合には,Steinberg and Cardellによる疑似尤度関数が適切であると判断される一方で,帰国シェアが未知である場合には,無視できない大きなバイアスを伴うことが分かり,帰国シェアの情報による推定方法の選択が必要であることが明らかとなった.また,残留/帰国に関わる調査データではないが,上述の問題を持つ調査データに対して実際に応用を試みた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
予定では,当該年度にweb調査を実施する予定であったが,帰国した元留学生というかなり限定的な調査対象を見込んでいたため,十分なサンプルサイズを確保することを念頭に,調査会社の再選定も含めて調査・分析設計の見直しを行った.そのため,予定よりも遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
研究当初の計画では,二次利用が可能な,残留を選択した元留学生を対象とする調査データと,web調査で新たに収集した帰国を選択した元留学生を対象とする調査データの合併データからアプローチする予定であったが,当該年度の成果より,利用可能な残留を選択した元留学生を対象とする調査データ,および帰国/残留の変数が欠測しているが,想定されうる独立変数が完備されている調査データがあればアプローチできることが分かった.そのため,引き続き,帰国を選択した元留学生を対象とするweb調査の実施に向けた検討を行うとともに,同時的に疑似尤度法の使用を想定した検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 大きくは,予定していたweb調査の実施がかなわなかったことに起因する,調査関連の未支出である. (使用計画) 生じた次年度使用額の大半は調査実施に関わるものなので,計画に従い,平成30年度請求分助成金も合わせて,平成30年度に予定している調査実施に用いる.
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