研究課題/領域番号 |
16K17245
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
奥井 亜紗子 京都女子大学, 現代社会学部, 准教授 (50457032)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 農村―都市 / 生活史 / 自営業 / 移動 / 調査票調査 / 親方子方関係 |
研究実績の概要 |
本研究は、戦後高度成長期における農村人口の都市移動と家族変動のプロセスを実証的に解明するものである。具体的には、兵庫県但馬地方から京阪神都市飲食系自営業に流入した労働力型都市移動者のライフヒストリーを通じて、農村から都市への連鎖移動と都市定着家庭における親方子方ネットワークの存在とその意義に着目する。 平成29年度は、これまで築いてきた大衆食堂「力餅」の連合会との協力関係のもと、「力餅」全店舗経営主の生活史に関する郵送調査票調査を実施した。この調査は平成30年度に創業130周年を迎える「力餅」の記念事業の一つという形で実施の許可を取り付けたものである。回収率は62.3%(48)と堅調であり、現存する店舗経営主の生活史のおおよそのイメージをつかむことができた。今年度は本調査の結果の一部を用いて、主に力餅経営主の都市転出から住込み修業時代、独立開業までの生活史をまとめた論文を『現代社会研究科論集』第12号に投稿したほか、現在は調査結果の概要を取りまとめた報告書を作成中である。 都市自営業層のなかでも、飲食系自営業はその性質上地域に密着し、地域社会の主要な担い手となることが多い。彼らの生活史は戦後京阪神都市社会の伸長と期を一にしたものとして重要であるが、移動と都市定着のプロセスに焦点を当てた飲食系自営業主のライフヒストリー研究は殆ど行われてこなかった。本調査は京阪神都市地域社会の戦後史という点においても貴重なモノグラフとなりうるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は研究実績に記した「力餅」経営主へのアンケート調査に加えて、大阪力餅組合、神戸力餅組合それぞれの幹部へのインタビュー調査を通して地域別の特色を把握し、「力餅」ののれん分けシステムの全体像を掴んだ。なかでも現在も店舗数の多い大阪力餅組合の組織の概要や内部の親方子方関係については重要な情報を得ており、大阪組合記録係との直接接触で多数の資料を入手することができたという点でも、進捗状況はおおむね順調であったといえる。 ただし、「力餅」経営主へのライフヒストリー・インタビューについては調査対象者との日程調整の都合上、やや遅れ気味であるため、来年度はより高齢化が進む初代経営主に重点的に焦点を当てて進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成30年度は、引き続き「力餅」経営主のライフヒストリー・インタビューを出来る限り収集する。また、昨年度に実施したアンケート調査結果について、力餅連合総会にて報告してフィードバックを行うと同時に、研究成果をまとめて報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
力餅連合会との相談の上、連合会協賛の郵送質問紙調査の結果報告書を作成し、平成30年度連合会総会で配布して研究成果のフィードバックをすることになったため、その印刷経費として次年度に繰り越している。
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