研究課題
本研究では、より一般性・普遍性の担保されたソーシャルキャピタル向上のモデルおよび計測のための調査項目セットのひな形の構築を行うために、複数の都市で地域ごとの特性を検討できる程度の調査範囲でソーシャルキャピタルを測定し、地域間比較を行った。研究を進めるごとに進捗を学会等で積極的に報告し、多様な分野の専門家から意見をいただいた。そこから、比較を行う際、地域住民の努力が真に地域のソーシャルキャピタルを高め、ソーシャルキャピタルの向上が地域の主観的・客観的な安全・安心寄与するのか、その因果律を担保するために、それぞれの尺度について経年変化を蓄積し、計量経済学分野で多用されているパネルモデル分析の手法を用いる必要があることが徐々に明らかになってきた。そこで、本研究の2年間に、神戸市と京都市で複数回の調査を実施してきた。神戸市では最終的に4年分の蓄積データが、京都市では2年分の蓄積データが収集できた。客観的な安全・安心指標として、消防や警察にもご協力をいただいている。これらのデータを用いて、地域コミュニティ単位のパネルデータを作成し、ソーシャルキャピタルの向上の状況とその真の効果について、研究3年目にはパネルモデル分析を実施し、本研究の最終成果として国際誌での投稿論文発表を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
計画当初はより広範な範囲に調査地域を広げる計画であったが、学会等での進捗報告の際に経年変化を見ることによる因果律の担保の重要性を示唆され、調査地を広げるだけでなく同一地域での経年変化を追うために、複数回にわたる調査を繰り返すことに方針をシフトしたが、順調に調査データは集まっており、次年度の最終成果のためのパネルモデル分析に向けて、必要な準備はおおむねできている状況である。
次年度は本研究の最終年度となるため、これまで収集してきたデータについての詳細な分析と、それらから得られた成果について学会等で積極的の発信していく予定である。また、本研究成果の最終目標は地域社会への還元であるため、調査にご協力いただいた地域を含む、神戸市、京都市全域に本研究の成果が伝わるような発信を行う。また、神戸市と京都市においては、引き続きこういった調査とその結果の地域への還元が一つのプロセスとして定着して動くような仕組みを行政と協力しながら構築し、住民の自助力と共助力が向上するような仕掛けを残すことを計画している。
新しい調査地の開拓ではなく、同一調査地での経年調査を優先する方向に研究方針をシフトしたため、当初の計画より安い金額で調査が実施できた。その分の費用は、本研究の最終成果報告を、国内だけでなく海外の学術誌に投稿したり、国際学会で報告するための費用に充てるとともに、地域住民への還元とそのための仕組みづくりなどに使用する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
International Journal of Law, Crime and Justice
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