本研究の目的は、「情報の発信者」としてのNPO(非営利組織)の社会的役割を実証的に探究することである。今日、社会問題の解決を担う主体として注目を集めているNPOは、①市民からの支持獲得、②社会問題の解決に向けた過程への参加機会の提供、③情報公開への対応およびアカウンタビリティの達成という3点から、戦略的に情報を発信することが求められている。本研究は、NPOが情報発信に際して利用する「媒体」と発信する「内容」に注目しながら、その戦略性を把握・分析するものである。本年度は、主に以下6つの活動を行った。
①最新研究をレビューし、学術的な整理を行った。また、実務家が集まる「ファンドレイジング日本2018」に参加し、NPOによる情報発信の最新状況を把握した。②緊急支援NPOと連携し、Facebookでの情報発信とオンライン寄付との関係を、寄付者が反応した情報の媒体と内容に着目して分析した。国際学会・国内学会にて発表し、投稿論文の準備を進めた。また、実務的にも学術的にも意義のある共同研究を進めるためのポイントを分析し、国際学会で発表した後、投稿論文(査読有)として発表した。③NPOのオンライン広告に対する人々の反応を自由記述で収集し、計量テキスト分析から、着目される広告の要素を抽出した。国内学会にて優秀発表賞を受賞し、学術ジャーナルに投稿した。④NPOの資金調達活動に関するデータを用いて、情報発信の媒体選択と内容の戦略性に作用する要因を分析し、国際学会で発表したほか、学術ジャーナルに投稿した。⑤NPO経営者へのインタビューから、NPOが「誰」に対し、どのような方法や情報発信でアカウンタビリティを果たそうとしているのかを分析し、学術ジャーナルに投稿した。⑥東日本大震災からの復興に従事するNPOに着目し、ソーシャルメディアでの情報発信と年間寄付額との関係を分析し、書籍の章として刊行した。
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