研究課題/領域番号 |
16K17248
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
飯田 豊 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (90461285)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メディア・イベント / メディア論 / 東京オリンピック / 大阪万博 / パブリック・ビューイング |
研究実績の概要 |
本務校の学外研究制度を利用し、東京大学大学院情報学環の客員研究員として、オリンピックを2年後に控えた東京を拠点として本研究課題に取り組んだ。国立国会図書館東京本館、東京大学附属図書館などの所蔵資料を活用して、メディア・イベントの歴史社会学的研究を推進した。 また、研究活動の一環として、NTT東日本からの委託で『Technology×Media Event』という小冊子の監修をおこない、長野五輪(1998年)開・閉会式の映像監督、リオ五輪(2016年)閉会式におけるフラッグハンドオーバーセレモニーのチーフテクニカルディレクターに対する聞き取り調査などを実施することができた。その結果、オリンピック中継のあり方がどのように変容しているのか、現場の視点を交えて明らかにすることができた。 本年度の主要な研究業績としては、まず、2019年1月、「遍在するスクリーンが媒介する出来事 ―メディア・イベント研究を補助線に」(光岡寿郎・大久保遼編『スクリーン・スタディーズ ―デジタル時代の映像/メディア経験』(東京大学出版会)所収)という論文を発表し、本研究課題の理論的到達点を示すことができた。 また、2018年10月には「通信技術と未来のメディア・イヴェントの発展」、2019年3月には「JOAフォーラム ―オリンピックで果たしてきたメディアの役割と影響」と第するシンポジウムに登壇した(いずれも招待講演、会場はNTT InterCommunication Center)。本研究課題の到達点を報告するとともに、eスポーツのような新しい動向をめぐって、専門家を交えて議論をおこなった。2018年6月には、龍谷大学大宮学舎で開催されたカルチュラル・タイフーン2018(カルチュラル・スタディーズ学会)において、「〈メディア研究〉の終焉」と題するパネルセッションに登壇し、本研究課題の到達点を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の論文「遍在するスクリーンが媒介する出来事 ―メディア・イベント研究を補助線に」が収録された、光岡寿郎・大久保遼編『スクリーン・スタディーズ ―デジタル時代の映像/メディア経験』(東京大学出版会)が年度内に出版され、本研究課題の理論的到達点を世に問うことができた。 また、NTT東日本からの委託で『Technology×Media Event』という小冊子の監修に携わったことは、研究計画時にはまったく想定していなかった出来事であり、そのおかげでオリンピック・セレモニーの演出に関わった実務家に聞き取り調査ができたことは、研究の進展に大いに役立った。 その反面、海外との比較文化的研究については計画通りに進めることができず、研究期間の延長を余儀なくされた。 以上の点を踏まえて、本研究の進捗に対する自己評価は「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではこれまで歴史社会学的研究に重点を置いて調査を進めてきたが、最終年度は比較文化学的研究についても分析と考察を進める。欧米における研究の進展に比べて日本では、国際化と情報化にともなうメディア・イベントの今日的変容を同時代的に分析する研究は停滞している。申請時の計画ではパブリック・ビューイングの日独比較を分析の中心とする予定であったが、本研究課題と問題関心を共有する先行研究の成果が顕著に現れてきたことなどを考慮して、その知見を最大限に援用しつつ、独自調査の対象と方法については見直しをおこなう。 研究成果については適宜、所属学会などで報告をおこなう。また、2017年度に出版した『現代メディア・イベント論 ―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』(勁草書房)の執筆者との連携も継続しつつ、現代におけるメディア・イベント研究の枠組みを確立する。そして本研究の最終成果については、2019年度に単著(『メディア論の地層 ―大阪万博からポストテレビまで』(仮))として刊行するとともに、さまざまな媒体を駆使して社会還元に努める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は学外研究を取得し、東京大学大学院情報学環客員研究員として、オリンピックを2年後に控えた東京を研究の拠点に、歴史社会的研究に重点を置いた調査活動をおこなった。申請時には想定していなかった変更であり、新生児の養育も相まって、当初の研究計画における比較文化的研究については先送りにせざるを得なかった。 申請時の計画ではパブリック・ビューイングの日独比較を分析の中心とする予定であったが、本研究課題と問題関心を共有する先行研究の成果が顕著に現れてきたことなどを考慮して、新しい共同研究体制の確立も視野に入れた連携をおこない、文献研究を中心とする調査活動をおこなう。文献の購読に加えて、ドイツ語の文献や映像の抄訳、資料整理などに研究費の執行を予定している。
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