メディア・イベントという概念について、歴史社会学および比較文化学の観点から調査し、その理論的再構築をおこなった。 欧米における研究の進展に比べて日本では、国際化と情報化にともなうメディア・イベントの今日的変容を同時代的に分析する研究は停滞していたが、日本で開催されたオリンピックや万国博覧会の変容、2000年代に定着したパブリック・ビューイングの日独比較などを通じて、現代におけるメディア・イベント研究の理論的枠組みを整理することができた。 2018年度にはオリンピック・セレモニーの演出に関わった実務家に聞き取り調査をおこなっており、2019年度は、2020年に東京オリンピックが開催される前提で、メディア・イベントとしての特徴を踏まえ、その課題と展望について論じた。 また、助成期間中に2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開催が決まったことを踏まえ、2019年度は、比較対象として1970年の日本万博博覧会(大阪万博)に焦点をあて、万博史を通じて日本のメディア・イベントの質的変容を明らかにした。そのさい、企業パビリオンが果たした役割を補助線とすることで、「メディア」と「イベント」の結びつき方がどのように変わっていったのかを明らかにできることを、いくつかの事例研究を踏まえて実証した。 そして、本研究の中間成果は、共編著『現代メディア・イベント論 ―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』(勁草書房、2017年10月刊行)にまとめ、最終成果を、単著『メディア論の地層 ―1970大阪万博から2020東京五輪まで』(勁草書房、2020年2月刊行)にまとめた。
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