研究課題/領域番号 |
16K17250
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
安達 智史 近畿大学, 総合社会学部, 准教授 (90756826)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ムスリム女性 / エージェンシー / 情報化 / ジェンダー意識 |
研究実績の概要 |
本年度は、マレーシアを拠点としながら、これまで得られた調査をもとに、データを分析するとともに、成果の発表をおこなった。また、イギリスおよびヨーロッパのモスクなどに訪問し、西洋の若者ムスリムのアイデンティティをめぐる問題について補足調査をおこなった。 イギリス、マレーシア、日本のムスリム女性の比較をおこない、それぞれ異なる課題を抱えており、それがアイデンティティの形式に異なる作用を与えている一方で、情報化を通じて信仰と主体的に関わっているという共通点が明らかになった。これまでの研究は、一国単位のムスリム女性を対象とするものであった。それに対して本研究は、国際比較を通じて、彼女たちのアイデンティティをめぐる困難やその「主体」形成をめぐる共通の戦略を明らかにできた点で意義を有している。 また、マレーシアの中産階級女性を対象とした論文を執筆に加え、マレーシアの大学生(マレー系、中国系、その他)を対象とした、ジェンダー意識をめぐる研究発表をおこなった。そこで、①ジェンダー意識や役割をめぐる、エスニシティを超えた共通の理解が存在すること、②ジェンダーの性質をめぐる意識が、ジェンダー役割をめぐる考え方に大きく影響を与えていること、③女性(とくにマレー系)が男性よりも保守的な態度をとること、④相対的に高い女性の学歴/比較的低い男性の学歴が、マレーシアにおける女男の役割意識や不平等な労働市場の帰結であること、などが明らかとなった。こうした知見は、マレーシアにおける女性の高い学歴達成に比して、低い労働参加やより高い地位に就きにくい理由を説明するものとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、もともと研究課題の最終年度であったことから、収集したデータを比較分析し、複数の論文執筆や報告をおこなう予定をしていた。だが、同年度に国際共同研究加速基金が採択されたため、マレーシアを拠点に調査を進める必要がでたため、当初の予定の変更が余儀なくされた。より本格的なデータ分析や成果報告は、一年延長をおこなうことで、次年度の課題とすることにした。 各国での調査は基本的に終了していることから、その他の点では概ね研究は順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
データ収集は終了しているため、その分析、結果報告、論文執筆が主な方針となる。具体的には、論文を2篇以上執筆するとともに、イギリスをテーマとした著書の出版、学会シンポジウムの組織化と発表、研究協力者を招いての学会での企画部会の編成などが予定されている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)が採択されたことで、調査計画の見直しが生じたためである。来年度は、データ分析および成果報告を中心に、研究費を支出する。
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