研究課題/領域番号 |
16K17253
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研究機関 | 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所 |
研究代表者 |
吉田 舞 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (50601902)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 先住民 / 都市底辺層 / 相対的底辺化 / ストリートベンダー / 労働 |
研究実績の概要 |
本研究では、フィリピン・マニラ首都圏における先住民バジャウ(Badjau)を調査対象とする。本研究では、これまでに申請者が事前調査として収集してきた一次資料を、フィールド調査により補強し、二次資料と合わせて考察することで、バジャウの「相対的底辺化」のプロセスを明らかにする。「相対的」とは、バジャウという先住民の集団が、多数派のフィリピン人「に対して」全体的に底辺化していることを指す。また「底辺化」とは、先住民が、労働階層において低賃金で不安定な下層労働や、職業威信体系において周辺的な職種に就くことと、その結果、生活が窮乏化することの二つの意味を持つ。本研究では、この課題を達成するために、労働、政策、マニラ全体の労働市場分析の3点について明らかにする。
初年度にあたる今年度は、8月と1月に、都市の先住民をめぐる生活環境と政策、支援の実態を把握するため、当事者および関係者と面談し、来年度の本調査にむけての調整と準備を行った。このほか、予備調査では、先住民を含むストリートベンダーのマニラの状況を把握するため、ベンダー組織を介して国立公園や観光街での路上の屋台及び行商人のインタビューおよび、参与観察を行った。
具体的な作業仮説については、来年度も継続的に検討を重ねる予定であるが、本年度は予定通り予備調査に加え、シンポジウムや研究会での報告を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、政府機関、大学及びNGOにおいて統計資料や文献調査を実施した。本年度の調査では、マニラのなかでも情報が少ない先住民の集住地の概要を知るために、現地NGOに協力を要請した。安全面や各地域のリーダーの紹介、日程調整など配慮してもらうことが可能になり、スムーズに調査を進めることができた。特に8月の調査では、マニラ首都圏および郊外の先住民の集住地を5か所ほど訪問し、仕事や生活環境などのインタビューを行った。また、各地区の行政関係者らと面会し、先住民支援や非先住民の住民との関係性などについて、必要な情報を収集できた。11月のフィリピン・マニラのアテネオ大学で開催された一般公開のシンポジウムでは、マニラの先住民を含む、マニラのストリートベンダーについて報告した。これにより、フィリピンの学術関係者および行政関係者などのネットワーク構築にも進展があった。このほか、12月のアジア社会学研究会にて、調査報告(タイトル「非失業を生きるーマニラにおける先住民の相対的底辺化の考察へ向けて」)を行ったほか、本課題の仮説について報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2017~2018年度は、マニラでのフィールド調査(各年とも、8月と2月を予定)を行い、世帯調査と対象者の生活史調査を行う。特に路上で物乞いや物売りをしている先住民を、マクロ的な視点から捉えるため、非先住民を含めたマニラのストリートの生業調査を行う。 また、調査データの分析および論文執筆、所属研究会にて研究報告を行う。
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