最終年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で、フィリピンの入国規制および厳重なロックダウンが続いていたため、予定していたフィールドワークはできなかった。一方で、インターネットを通じて現地メディアやSNSなどでの情報収集は続けており、政策の動向や調査対象者の置かれている状況などを間接的にフォローすることは可能であった。前半は、これまでの調査データを整理し直し、論文「労働のインフォーマリティ再考ーマニラのストリート・ベンダーを事例として」を執筆し、日本都市社会学会年報38号に掲載された。ここでは、特に、マニラのベンダーの階層化を、先住民を含めて描き出すことができた。また、本課題の分析枠組みに関しては、特定非営利活動法人社会理論・動態研究所の定期研究会やセミナーなどで報告し、理論的に強化することができた。
2021年2月には、マニラの調査協力者から、路上で生計を立てていた露天商および歩き売りのベンダーらが販売活動を再開したとの報告を受け、現地アシスタントに依頼して、追加の聞き取り調査を行った。これにより、コロナ禍前後のベンダーらの売り上げや生活の変化、また、ロックダウン中の親戚、自治体、同業者団体ネットワーク間の支援状況や生活実態について知ることが可能となった。最終年度に、これまでの調査データを最新の状態へアップデートすることができたことは、本課題にとって非常に重要な作業であったと考える。
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