研究課題
2017年度は、3時点縦断データを作成し、データクリーニング、さらに、主な調査項目となる高齢者用うつ尺度やその他の調整変数項目のシンタックスとコマンドのダブルチェックを行った。また、既存の2時点縦断データを用いたサブ解析を行った。そのうち5点の解析成果を2つの国際学会(The 21st World Congress of Epidemiology, International Epidemiological Association; The 9th International Society for Social Capital. )および3つの国内学会(第32回日本国際保健医療学会; 第76回日本公衆衛生学会総会; 第28回日本疫学会総会)で発表した。公衆衛生学会においては、最優秀口演賞を受賞した。国際ジャーナルにも論文が掲載され(American Journal of Epidemiology)、研究成果の一部がNHKニュース(2017年7月23日)、朝日新聞(2017年10月11日朝刊)で紹介された。現在、1本の論文を執筆中であり、今年度は、並行して、3時点パネルデータを用いたリカバリー要因を検証する。具体的には、ソーシャル・キャピタルに着目し、ソーシャル・キャピタルの豊かさがうつ発症の抑制要因やリカバリー要因となっているのかを検証する。さらに、ソーシャル・キャピタルの種類についても着目し、どういったソーシャル・キャピタルが特に高齢者のメンタルヘルスに影響を及ぼしているかを検証してゆく。
2: おおむね順調に進展している
被災地の要配慮者である高齢者の震災後の心理的問題と住居の転居の関連について、震災前後のデータを用いた分析を行い、学会発表および論文発表することができた。本研究では、震災前後のデータを用いて震災後1年以上経過後の高齢者のうつと転居の関連を震災被災地の宮城県岩沼市のJAGESデータを用いて検証した。年齢、性別、主観的健康感、教育歴、所得、独居、震災による身近な親族や友人との死別、家屋被害の影響を調整しても、仮設住宅への転居者で、うつ発症リスクが2倍となっていた。1.物理的な住居環境の影響(狭い空間や騒音など)、2.社会的な影響(新しい近隣関係やプライバシーがない環境など)、3.心理的な影響(将来への不安など)の3要因が仮設住宅転居者のうつ発症リスクに影響した可能性が考えられた。
うつ予防、リカバリー要因について、ソーシャル・キャピタルに着目し、3時点縦断データを用いて検証を行う。このリカバリー要因のうち、介入可能性が高い要因をとらえ、高齢者のうつに対する施策の提案を行っていく予定である。
当初想定していた調査費用、データクリーニングのダブルチェック、分析や関連分析費用などを抑えることができたため。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Am J Epidemiol
巻: 187(3) ページ: 455-464
10.1093/aje/kwx274