本研究は、中間的就労を担う多様なアクターの実態、および被就労支援者の個別具体的な支援事例について現地調査により明らかにし、中間的就労が効果的に機能するための諸条件を実践面も踏まえ明らかにすることを目的とする。 最終年度は、労働による包摂を目的とする中間的就労(IAE制度)を評価する指標を検討した。政府の用いている政策評価指標は雇用復帰指標で「ダイナミックな退出」がどれだけ可能となったかを測るものである。ダイナミックな退出とは、①持続的雇用(無期限雇用あるいは6か月の有期雇用)、②履行的雇用(6か月未満の有期雇用および補助金付き雇用)、③積極的退出(他のIAE制度の利用、研修への参加、年金受給権の取得)を含むもので、必ずしも無期雇用に限ったものではない。また、契約終了者のうちダイナミックな退出に至る割合(ダイナミックな退出割合)を6割以上と目標を定めている。結果は45%程度であり、半数強がネガティブな退出(非活動、失業、音信不通、使用期間中の契約破棄)となっている。 他方で社会面での支援に関する評価方法の構築を、中間的就労を担う組織を代表するアソシエーションによって開始されている。中間的就労の利用者の「社会的状況の改善度」を住宅、健康、権利へのアクセスそして職を得て制度の利用を終了する者の割合といった4つの領域で測る指標、および「幸福の改善」といった本人の主観から導き出される指標の構築が進められている。 こうした政策評価からみた現場と政府の齟齬の実態は、中間的就労を積極的労働市場政策として機能を強化させたい政府に対して、中間的就労を、就労による社会参加ととらえてきた現場との齟齬から生じている側面があると結論付けた。
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