研究実績の概要 |
ニューヨーク市における就労支援に焦点をあて,議会資料を分析した。市議会の公聴会におけるニューヨーク市の担当部局であるHRA(Human Resources Administration)の証言をみると,従来の就労支援に問題点があるためにその方針を転換しようとしていることが明らかになった。すなわち,就労最優先アプローチを基本にしつつも,対象者の特徴により支援のあり方を変える方針となっている。また,人的資本アプローチの要素も強くなった。また,市議会の公聴会で取り上げられているように,ニューヨーク市が抱える貧困問題のなかでもホームレス問題に焦点があたっているということも明確になった。 そのうえで,HRAの政策転換を調べるためにCity University of New York(CUNY)がHRAと連携しておこなっているCUNY EDGE(EDUCATE, DEVELOP, GRADUATE and EMPOWER)プログラムについて聞き取り調査をおこなった。CUNY EDGEプログラムは公的扶助受給者がCUNYの大学やコミュニティ・カレッジを卒業できるように様々な支援をおこなうプログラムである。支援内容は,授業やキャリアに関するアドバイス,インターンシップ等の就職支援,公定扶助の就労要件を満たすためのWork Studyなどである。今回の聞き取り調査では,CUNYの4年制大学およびコミュニティ・カレッジのCUNY EDGEプログラム担当者から,プログラムの概要,参加者の特徴,他機関との連携等の話をうかがった。 プログラム担当者がCUNY EDGEプログラムの問題としてあげていたのがホームレス問題であった。参加者の中に住居不安定の学生がいるとのことで,そうした学生への支援をどのようにしていくかが問題であるという。今後,ホームレス問題との関連で調べていきたい。また,CUNY EDGEプログラムはニューヨーク市の政策転換が強く影響していると考えられるが,全体の施策の動向および関連性について今後も調べていきたい。
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