研究課題/領域番号 |
16K17267
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
室田 信一 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (00632853)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コミュニティ / 地域包括ケア / 福祉国家 / 福祉社会 / ボランティア / オーガナイジング / 住民主体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ソーシャルワーカーの専門性に関する理論的研究と、社会福祉協議会による住民活動への関与に関する歴史的研究、住民参加型サービスに関与する専門家と住民に対する調査研究を通して、今日の日本の社会福祉政策推進における住民と専門家の役割について分析することである。 H28年度は研究初年度であったため、まず理論的背景の整理をおこなった。一つにはソーシャルワーカー(特にコミュニティを基盤に活動する専門家)の専門性が日本と海外でどのように位置付けられているのかについて整理した。二つ目には、社会福祉協議会のコミュニティワーカーにとって重要な概念である「住民主体」という概念がどのような経緯で登場し、これまで用いられてきたのか、同様の概念は海外では専門性の中にどのように位置付けられているかについて整理をおこなった。 次に、当初の計画では関東の某市で住民を対象とした調査を実施する予定だったが、H28年度はその準備を進めるに留まった。調査の仮説をたて、その仮説に基づいて、某市の社会福祉協議会の担当者と調査の設計について議論をして、組織的に推進するための意見交換をおこない、H29年度に本格実施する方向で準備が進んでいる。 最後に、アメリカのロサンゼルス市内のNPOを訪問し、住民主体の活動の推進方法について担当者へのインタビューを通して情報収集をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画ではアメリカとイギリスの両国をフィールドワークの対象としていたが、研究予算の都合から国際比較の対象国をアメリカ一刻に限定することにして、そのフィールドワークを初年度に実施することができた点では順調に進んでいるということができる。 また、調査研究のための理論研究も予定通りに実施することができた。特に国内の住民主体の議論を整理するための資料の収集ができたことは本研究に大きく役立つものである。 一方、当初の計画では初年度に国内で質問紙調査を実施する予定になっていたが、協力団体との調整の必要性、調査のための理論仮説の生成、調査の設計に時間がかかり、本格的に実施するのはH29年度以降となったことは当初の計画よりもやや後ろ倒しとなっている。しかし、この遅延は調査設計上必要なものであったと考えている。この調査は住民がいかに地域課題に対して自覚的に取り組んでいるかという部分を明らかにするものであるが、そのための「自覚性指標」を開発しているが、その開発の手続きは研究者が密室でおこなうのではなく、住民とともに指標を作成する必然性が指摘され、その指摘を受けてアクションリサーチをおこなうためのチームを構築するところから着手しており、当初の予定よりも時間がかかっている。ただし研究者よがりの調査ではなく、住民目線の調査が実施できると確信している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず国内の調査を完了することが最大の目標になる。H29年5月に某市の社協担当者、行政の担当者を1回目の打ち合わせを開催し、具体的な調査設計について合意を図る。9月までに「自覚性指標」開発のための会議を開催し、調査設計をおこなった上で10月から11月にかけて質問紙調査を実施する予定である。調査の結果を収集し、分析して、H30年度の地域福祉学会で報告する予定である。 また、質問紙調査の結果を参考に、日米におけるワーカーの養成プログラムを比較し、日本における現行のワーカー養成プログラムが住民の主体性を引き出すことができているのか、どのようなプログラムが効果的か、検討し、その結果を研究成果(論文)として発表する予定である。
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