研究課題/領域番号 |
16K17271
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
福田 菜々 北海道科学大学, 工学部, 准教授 (70554731)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高齢者 / 地域包括ケア / 居場所 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、学内における海外研修制度を利用して1年間在外研究を行うことになったため、日本国内で予定していた調査を実施することはできなかった。 しかし、滞在国であったアメリカにて、高齢者を中心としたコミュニティや施設を複数の地域で視察し、アメリカにおける地域福祉の現状について視察および調査を実施した。具体的には、高齢者の住環境として、独立した生活が可能な高齢者向けの集合住宅から介護サービス付き、そして最終的には特別介護老人施設に至までのさまざまな段階に合わせた施設が同じひとつの敷地内に計画されるリタイヤメントコミュニティを気候や環境の異なる複数の地域で視察し、現状を把握した。 滞在拠点であったカリフォルニア州アーバイン市においては、今後の高齢社会に向けた対策を掲げており、「地域の高齢者が馴染みのある地域で老いること(Aging in Place)」を可能にするための様々なサービスを提供している。その中でも、市内3カ所に設けられたシニアセンターでは、毎日多くの高齢者が足を運び、文化講座やフィットネス、ランチプログラムなどに参加している様子が見られた。 また、シニアセンターを利用する65歳以上の高齢者23名に対しインタビュー調査を実施し、多くがランチプログラムに参加していることが明らかとなり、それが社交の場・居場所となっていることが分かった。しかし、多人種によって構成されるアメリカならではの問題として、言語がコミュニケーションの障害となっていることや、人種毎にグループを形成する傾向があり、それが原因で他者との隔たりが生じていることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
海外研修のため、平成29年度に計画していた国内での調査を実施することができなかった。そのため、進捗状況としては遅れていると判断できる。一方で、高齢社会における問題は日本国内のみならず、世界中の国々で問題視されていることから、滞在国であったアメリカにおいて、高齢者を取り囲む環境や福祉施設・社会情勢や地域における取り組みや現状を調査することができた。特に、日本ではあまり普及していないCCRC(リタイヤメントコミュニティ)を複数視察し、居住者の生活の様子や施設設備および運営状況について見聞を広め、日本で普及しない原因について考察した。また、アーバイン市営のシニアセンターに通う65歳以上の高齢者を対象にしたインタビュー調査を通して、現地の高齢者の率直な意見を得られ、高齢者の居場所としてのシニアセンターの存在意義を明らかにすることができた。今後、日本でのデータを用いて比較研究をする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究課題の調査対象である武蔵野市のテンミリオンハウスに再び足を運び、昨年度に実施する予定であった行動観察調査などを行う。同様に、市からの助成金額が異なる地域において、高齢者の居場所作りを行っている事例を調査することで、地域の実情や資源に基づいた地域包括ケアの確立方法およびプログラム運営の在り方について考察する。 昨年度実施できなかった調査を今年度中に実施するとともに、本年度計画している調査分も進めていく必要があるため、調査対象地との良好な関係を築くとともに、調査時期や調査内容、および打合せ等を迅速に進め、実施することが課題となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は海外研修にて日本を離れていたために、当初予定していた調査を実施することができず、差額が生じた。差額については、平成30年度分の助成金と合わせて、昨年度実施予定であった国内での行動観察調査を行う際の旅費および謝金等、また国内外での学会発表に充てる予定である。
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