平成30年度の主な研究成果は以下の通りである。 第1に、カリフォルニア州の医療保険取引所「カヴァード・カリフォルニア」を通して販売されている保険プランの設計・販売戦略に関する事例研究として、州内の地域保険市場の中でも加入者数が多く、なおかつコミュニティの特性に対応した保険プランの開発・販売が行われているサンフランシスコ市の実態を検討した。その結果、サンフランシスコ市において地域密着型の保険事業を手掛けるチャイニーズ・コミュニティ・ヘルス・プラン社(以下「CCHP社」とする)は、市内に多く住む中国系住民の医療ニーズに対応した保険プランを設計し、広東語を中心とする言語を用いて保険説明会を開催しているほか、特に連邦保険料補助・患者負担補助を受けるために必要な手続きを支援するアウトリーチ活動を、CCHP社の母体となるサンフランシスコ・チャイニーズ・ホスピタル協会の傘下であるNPOのチャイニーズ・コミュニティ・ヘルス・リソース・センターと連携して積極的に行っていることが明らかになった。 第2に、カリフォルニア州における保険加入の動向について分析した。その結果、州の加入者数は当初の見込みに匹敵する規模で大きく増加し、州民に占める無保険者数の割合も全米平均を下回る水準にまで低下したことが明らかになった。 第3に、2017年に発足したトランプ政権の「オバマケア」に対する姿勢・見解および医療保障政策の展開をふまえて、今後の保険加入の行方を検討した。その結果、トランプ大統領は大統領選の時期から現在まで「オバマケア」に対して批判的な姿勢を示しており、政権発足後には「オバマケア」に基づく保険加入促進策の円滑な実施を妨げる大統領令や、「オバマケア」の根幹となる個人への保険加入の義務化に関する違憲訴訟が提起されており、今後も加入者数が順調に増えていくかどうかについては不透明であることが明らかになった。
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