研究課題/領域番号 |
16K17277
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
加藤 倫子 立教大学, 社会情報教育研究センター, 教育研究コーディネーター (40756649)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 保護司 / 更生保護制度 / 犯罪/非行からの社会復帰 / 民間性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、主に海外の犯罪社会学の研究蓄積を踏まえ、戦後の更生保護制度が整備され展開していく過程に着目し、保護司の処遇実践における諸課題と社会構造上に存在する諸問題との結びつきを明らかにすることである。具体的には、保護観察対象者の「立ち直り」において、結婚や就学・就労、家族などの周囲の人間関係の回復、アイデンティティの回復、被害者との関係の調整といった、保護観察の処遇実践で共通にめざされるゴールに向け、保護司がどのように処遇実践をおこなってきたのかを、雑誌『更生保護』の1950年代~1970年代の記事を対象とし、分析する。本研究は、これまで日本でほとんど研究蓄積のない更生保護制度の歴史に焦点化した研究であり、過去の処遇実践が現代のそれとどのように結びついているのかを検討する点で、新たな知見をもたらしうる研究であるといえる。とりわけ、平成29年度は資・史料の読解をすすめ、「保護司が処遇においてどのようなことに困難を感じていたのか」を明らかにすることを研究計画の中心に据えた。 平成29年度は日本社会学会で、民間人である保護司が、処遇においていかに葛藤し、また民間人としての専門性をどのように発揮するのかについて口頭発表する機会を得た。「無給のボランティア」である保護司は、保護司の職務をやめようと思えばいつでもやめられる立場にあるが、そうではなく、対象者とかかわり続けるからこそ、それが対象者にとっては「温かい心と心との接触、人間性の交わり」と感じられるのではないかと指摘した。 しかしながら、これは既存の研究枠組みに沿った分析であり、概念の精緻化という点では昨年度から進展できず、課題として残った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は学会報告をおこなうことができたが、この内容は既存の研究枠組みに沿った分析であり、概念の精緻化という点では昨年度から進展できず、課題として残った。また、平成29年度の分析課題である、処遇実践が置かれている社会文脈についての比較検討についてはまだ分析途上であることから上記の評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、資料分析から得られた概念の精緻化に取り組むとともに、最終年度の課題である「社会を明るくする運動」を事例とした分析にも着手する予定である。また、これまでの研究成果をカナダのトロントで開催されるInternational Sociological Associationで報告する予定である。
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