研究課題/領域番号 |
16K17283
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
郭 芳 同志社大学, 社会学部, 助教 (70755389)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中国 / 高齢者ケア / 福祉の市場化 / 日本式介護 |
研究実績の概要 |
平成29年度は以下の2つの研究に取り組んだ。1)中国における高齢者ケア供給の現状と特徴の整理、2)中国に進出した「日本式介護」サービスの内容の明確化、である。 具体的には、1)について、中国では、高齢化と家族機能の弱体化が進展し、1980年代から以降、サービス利用に伴う費用徴収が拡大し、高齢者ケアの市場が存在するようになった。その後、福祉の「社会化」が推進され、ケアの供給主体は多元化した。家族が担えない部分は主に市場が補完するようになり、中国のケア供給は基本的な方向性として「家族から市場へ」展開してきた。また、民間事業者は高齢者ケア供給者に占める割合が高いことから、「民営化」を通して市場化が進んできたことがわかった。同時に、供給者の間では利用者を獲得するため、「競争」が生じている。利用者の選択と供給者間の競争の発生に伴い、中国のケア供給は市場化へ踏み込み、福祉の「市場化」は形成されつつある。また、急速な高齢化により、中国では準市場の形成なしに、福祉市場が拡大している。 2)について、日本における介護サービスの特徴をみる際重要と考えられる項目を、建物の設計、環境設備、サービスの内容、ケアに対する考え方、認知症ケア、職員の姿勢の6つにまとめた。これらの項目に沿って調査を行い、日本式介護の内容の提示を試みた。日本式介護は、中国の環境・制度、文化・習慣に影響を受けて、ハード面である施設の【建物設計】や【設備環境】、【サービスの内容】は現地の状況に合わせて調整している。一方で、日本の介護事業者はソフト面の【ケアに対する考え方】である、自立支援、尊厳のある支援、エビデンス支援などの相手本位の介護理念や考え方を日本の介護の真髄と考え、中国での事業展開においては維持しようとしている。また、認知症高齢者がいるものの、それに対する認識がまだ低い中国で日本の事業者は【認知症ケア】を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の文献研究およびインタビュー調査から導き出された論点をふまえ、本研究の理論部分を整理することができた。また、3ヵ所の日本介護事業者にインタビュー調査を行うこととし、中国に導入された「日本式介護」サービスの内容を明確することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
日本介護事業者の進出環境である「中国における高齢者ケア供給の現状と特徴」について整理したため、成果を論文にまとめる。 本研究もう一つの目的である、「日本式介護のどのような点が現地サービスに比べて優れていて、それを利用するとどのようなメリットがあるか、日本と中国比較の視点から実証的に明らかにする」ための評価プログラムを作成する。また、評価プログラムの妥当性を確認するための調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本式介護サービスの質を評価するプログラムの作成およびその妥当性を確認する調査の費用として、また成果発表のための旅費として使用する予定。
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