研究課題/領域番号 |
16K17289
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤 桂 筑波大学, 人間系, 准教授 (50581584)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インターネット / 感情 / 社会的共有 / 仮想現実 / ソーシャルメディア |
研究実績の概要 |
平成28年度は,第一に,ソーシャルメディア利用者を対象としたウェブ調査(縦断的調査)を通して,メディア上での“感情経験の社会的共有”がもたらす心理的影響について検討した。具体的には,787名(男性253名,女性534名;平均26.2歳)を対象とした3波による縦断的調査を実施し,ネガティブ感情経験後のメディア上および対面での社会的共有により,感情低減がもたらされるかについて検討した。その結果,メディア上および対面のいずれも,他者への社会的共有はネガティブ感情の低減に寄与しておらず,時間経過のみが感情低減をもたらしていることが明らかとなった。加えて,ネガティブ感情がその後の社会的共有行動を促進するプロセスが示されたものの,社会的共有行動によってその後のネガティブ感情の低減へと結びつくプロセスはほとんど示されなかった。 また第二に,ヴァーチャル・リアリティ機器を用いた実験を行い,機器装着後の認知処理の変化を測定し,メディア上への“身体の拡張”がもたらす影響に関する予備的検討に着手した。具体的には,ヘッドマウントディスプレイを装着し,リアルな身体感覚とともに3D仮想空間を移動する体験の前後において,創造性を測定する課題の得点がどのように変化するのかについて検討した。その結果,仮想空間への没入によりアイディア算出課題における独創性や柔軟性が促進され得ること,さらにその効果は仮想空間内での体験内容によって大きく異なる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度には,当初から予定していた大規模なサンプルを対象とした縦断的ウェブ調査の実施のみならず,次年度以降の研究計画であった実験的検討にも着手することができた。そのため,本研究課題に関しては,当初の計画以上の進展を見せていると位置づけることができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には,今年度に実施した予備的検討の結果に基づき,ヴァーチャル・リアリティ機器を用いた実験を行い,その結果が同様に見いだされるかどうかについても検討していく。さらに,平成28年度の実験的研究の成果をさらに発展させ,身体感覚の変化についても緻密に測定しながら,その後の認知・感情・行動面における変化を多様な観点から分析していく予定である。この分析を通して,メディア上への“身体の拡張”がもたらす影響を検討する。加えて,本研究計画の最終年度を迎えるにあたり,これまでに得られた知見の統合,および国内外の学会での発表,学会誌論文への投稿も予定している。
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