研究課題/領域番号 |
16K17290
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
玉利 祐樹 静岡県立大学, 経営情報学部, 講師 (60737360)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | リスク認知 / 意思決定 / 言語プロトコル法 / 描画法 / 過程追跡法 / 決定方略 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、リスク認知の情報処理過程を検討するために、多属性意思決定過程における決定方略の計算機シミュレーションを行った。分析は、平成28年度に実施した調査データを用いた。分析にあたっては、 調査データのうち、形容詞による回答を求めた自由記述データを分析対象とした。自由記述データに、形態素解析を行い、名詞、動詞、形容詞を抽出した。出現頻度が2以上であった品詞に、情報検索の分野で開発された確率的潜在意味解析を行って、トピックの抽出と、各トピックにおける品詞の出現確率を推定した。品詞と、品詞の出現確率を用いて、計算機シミュレーションを行った。決定方略は、加算型、加算差型、連結型、分離型、EBA型、辞書編纂型を用いた。計算機シミュレーションの結果から、本調査における回答は、辞書編纂型に最も類似した情報処理が行われていた可能性が示唆された。本調査では、「原子力発電所がある町」・「あなたが住む町」の二つの町についての回答を求めており、二つの町についての差異を明確にする情報に注目が向きやすい課題であったため、辞書編纂型と最も類似する結果を示したと考えられる。以上の分析から、確率的潜在意味解析と計算機シミュレーションを用いた分析枠組みから、自由記述データに含まれる情報処理に関する情報を、定量的に検討できる可能性が示唆された。また、リスク認知における情報処理の型を分類し、また定量的に評価できる可能性も示唆している。今後は、推定された決定方略による選択の説明可能性を検討する必要があると考えられる。また、従来行われてきている実験場面における情報モニタリング法、眼球運動測定データから推定された決定方略や選択との関係を検討する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、潜在意味解析モデルを用いたリスク認知構造の推定、および相互理解と合意形成の促進に向けたリスク認知構造の差異の可視化方法を提案することを目的としている。本年度は、前年度に実施した潜在意味解析モデルによるリスク認知構造の分析に加えて、決定方略の観点からリスク事象に対する情報処理過程の推定を実施し、特定の決定方略を同定できる可能性が示唆されている。意思決定との対応についての検討を実施には至っていないものの、自由記述データから、情報処理過程の類型を推定できる可能性が示唆されている。リスク認知構造の差異の可視化に有用な情報となることが期待される。また、昨年度に予定していたリスク事象を変更した調査も進行中である。よって、 研究計画全体としては、おおむね計画通りの進捗であると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、現在回答を集めている調査データを用いて、本年度の分析で推定された決定方略と、意思決定との関係の定量的評価を進める予定である。推定された決定方略による意思決定の説明可能性を定量的に検討する。また、描画データや眼球運動測定データへの適用可能性や、本分析枠組みの潜在意味解析モデルへの統合についても検討を加える。これらの結果から、リスク認知構造の可視化表現および呈示方法についても、検討を進める。また、これまでの研究成果について、学会で発表・議論するとともに、論文としてまとめ、投稿する予定である。
|