本研究の目的は集団間態度、政治的態度に及ぼす影響に及ぼす2種類の社会的地位の影響を明らかにすることであった。最終年度に当たる2019年度は、2つのWeb調査を実施した。まず、政治的態度との関連を調べるため20歳~69歳の社会人1320名 (平均年齢=45.71歳,男性651名,女性669名) を対象に調査を行った。2016年度に作成した支配―尊敬尺度日本語版、SDO7尺度、12項目の政治的態度を測定した。続いて、集団間態度との関連を調べるため、20歳~69歳の社会人693名 (平均年齢=45.83歳,男性347名,女性346名)を対象に調査を行った。社会的地位、SDOとともに性差別態度を測定した。 支配―尊敬尺度日本語版について探索的因子分析を行ったが、先行研究とは異なる因子構造に分かれた。これは、2016年度の調査の時とは異なり、回答の際に特定の集団を指定しなかったことが原因だと考えられる。共通性の低い項目を除き、支配、尊敬の各因子で高い信頼性が得られたため先行研究の因子構造を採用することとした。また、2種類の社会的地位と政治的態度の間に直接的な関連は認められなかったが、反平等主義的志向性を介して支配と移民受入れ、社会福祉政策等の7つの政治的態度との間に間接的な関連が認められた。この結果は、集団内個人レベルの地位が集団間態度へと影響を広げていく一つの過程を示していると考えられる。さらに、支配は反平等主義的志向性を介して敵意的セクシズムと関連することが示された。一方、尊重はSDOを介さず敵意的セクシズムを抑制していたが、同時に好意的セクシズムを高める可能性も示唆された。
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