研究課題/領域番号 |
16K17296
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
前村 奈央佳 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50632238)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 移民 / 沖縄 / アイデンティティ / ルーツ観光 |
研究実績の概要 |
H28年度は、10月末に開催された「第6回世界のウチナーンチュ大会」の期間中(後)に面接調査を実施したことが主な実績である。当大会に参加するために来沖した沖縄県系の移民(2世以降の世代)12名(うち、1名は大会の数か月後に実施)に対して約1時間にわたって聞き取りを行った。面接は申請者が単独で行うか、ポルトガル語・スペイン語の通訳が可能な研究者1名が同席する形で行った。調査協力者の出身国は、アメリカ・ブラジル・ペルーであり、全員が移民3世ないし4世であった。聞き取り内容は、出身国や使用言語、沖縄系の親戚の情報、来沖回数等のデモグラフィック項目に加えて、沖縄訪問(ルーツ観光)の動機、目的、参加者にとっての出身国と沖縄のイメージ、意味づけないしその変化であった。 また、沖縄県系移民のルーツ観光についてより多くの事例を収集する目的で、上述した詳細な面接調査に加えて、複数の調査員がイベント会場内を巡回する形で簡単なインタビュー調査も併せて実施した。インタビュー調査は沖縄県内の大学に所属する学生と、外国語を専門とする大学に通う学生のペア数組で3日間にわたって実施した。調査項目は、「来沖前後の沖縄イメージ」、「沖縄と居住国の類似点と相違点」、「自身にとっての沖縄」の3点を重視してオープンな形式で回答を求めた。調査は日本語ないし英語で実施され、79名の調査協力者から回答が得られた。H28年度の後半はこれらのデータの文字起こし、整理を行った。大会調査について、一部内容は沖縄県内の新聞記事に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主たる調査である「第6回世界のウチナーンチュ大会」期間中の面接調査が滞りなく終了した。一人一人の面接の実施や準備に予想以上の時間を要したため、1時間を越える深遠な聞き取りを実施することができた調査協力者の人数は想定よりも少なかった。しかし、調査員を介した簡略版のインタビューを数十名規模で実施したことにより補うことができていると考える。 ただし、調査協力者の総数が増えたことにより、それぞれのデータの整理や分析はやや遅れているため、今年度の研究計画と並行して進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、「1.質的データの分析」と「2.フォローアップのための調査」「3.研究成果の報告」を行う。「1.質的データの分析」は、大会調査で得られたデータを集計・分析し、「3.成果報告」として学会発表・論文化していく予定である。分析方法は、当初の計画どおりグラウンディッドセオリーによるアプローチを予定している。 「2.フォローアップのための調査」は、大会期間中に聞き取り調査ないし簡易なインタビュー調査への協力者のうち、続く研究への協力依頼のための連絡先の提供について許可が得られた参加者(30~40名程度)に対して実施する。大会期間中は「オキナワ」としてのアイデンティティが高揚している状態であったと考えられるが、本調査では、帰国後、移民が日常生活においてオキナワ、居住国、大会での訪沖体験の捉え方について検討する。調査方法は、協力者が提供したメールアドレスに調査協力依頼文とweb調査画面への案内を送る。ただし、メールを介した調査は送受信過程でミスが発生しやすく、思ったように調査協力が得られない可能性がある。その場合は、長時間の面接調査への協力者12名に対して、大会での聞き取り内容を補足するための質問をする形式に切り替える。 「3. 研究成果の報告」については、今年度中に国際会議(アジア社会心理学会)及び国内の心理学・社会心理学系の学会で報告を予定している。また、大会調査で得られた結果については沖縄県内の研究機関誌に投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の主たる調査に位置づけられる「第6回世界のウチナーンチュ大会」調査が終了した時点で、当該年度予算の約83%を使用(未決済分を含む)していたことから、当該年度中のデータ整理のための人件費、補足調査実施の渡航費を十分に確保できない可能性があると思われた。当初の申請額より支給額が減額されていることも鑑み、研究資金の不足に備えて300(千円)の前倒し支払い請求を求めた。実際には前倒し請求で承認された全ての金額を使う必要がなかったため、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
前倒し請求前との差額は-80(千円)程度であり、結果的には申請時の計画とそれほど大差がないため、当初の計画通り研究を遂行する。
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