研究実績の概要 |
本年度は身体への気づきの程度が攻撃的な対人行動に及ぼす影響を検討した。 まず、攻撃的な対人行動の指標としてインターネット上の荒らし行為(以下、ネット荒らしとする)に着目し、ネット荒らしを定量的に測定するための尺度を開発した(増井・田村・マーチ, 2018)。次に、ネット荒らしを行いやすい個人特性を明らかにするため、Dark Tetrad傾向(以下DTとよぶ)とネット荒らしとの関連を調べた。DTとはマキャベリアニズム、サイコパシー、自己愛性傾向、サディズム傾向の総称のことで、攻撃性や衝動性の高さ、共感の著しい欠如などの特徴が挙げられる(Paulhus & Williams, 2002)。研究の結果、DTの各特性の高い人ほどネット荒らしを行いやすいことが示された(Masui, 1018; 増井, 2018)。 次に、身体への気づきの程度がDTとネット荒らしとの関係性に及ぼす影響を検討した。研究では主観的な身体への気づきの程度を測定するためのMultidimensional Assessment of Interoceptive Awarenessの日本語版を用いた(庄子他, 2014)。インターネット調査を通じて600人の男女から回答を求めたところ、主観的な身体への気づきの程度がサディズム傾向の高い人のネット荒らしを調整することが明らかとなった。具体的には、サディズム傾向の高く、身体への気づきの程度が低い人がネット荒らしを行いやすいことが示唆された。
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