本年度は身体への気づきの程度がサディズム傾向の高い人の攻撃行動に及ぼす影響を検討した。攻撃行動の指標として、近年注目が集まっているネット荒らし行為を測定した。インターネット調査会社の登録モニター280人を対象に、身体への気づきの程度、サディズム傾向、ネット荒らしを測定する質問紙への回答を求めた。分析の結果、サディズム傾向が高くても、自身の身体内部への気づきが高ければ攻撃行動は高まらないことが示唆された。 本研究の結果、身体への気づきの程度はDark Triad(マキャベリアニズム、サイコパシー傾向、自己愛性傾向を総称したパーソナリティ)やサディズム傾向といった反社会的なパーソナリティの攻撃的な反応と密接に関連することが明らかとなった。具体的な成果として、身体的な温かさはDark Triad傾向の高い人の攻撃行動を抑制し、援助意図を促進する役割を果たすこと、たとえサディズム傾向が高くても、身体への気づきの程度が高ければ他者に対して攻撃的にならないことが明らかとなった。 本研究の成果は、身体への気づきの程度を高めることがた反社会的なパーソナリティの水準の高い人たちの社会的に不適応な反応を抑制することにつながる可能性を示唆している。今後は、いかにして身体への気づきの程度を高めていくのかについて検討していくことが必要であると思われる。
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