研究2(2017年度)では,暴力概念のアクセシビリティと暴力への潜在的態度が,暴力行為に影響を及ぼすかどうかを検討した。しかし,研究2の実験では,状況的に思考や判断が可能な状態あり,顕在的な要因の影響が排除できない可能性が考えられる。この可能性を排除するために,研究3(2018年度)では,基本的には研究2と同様の実験を行うが,認知的負荷状態に置いた場合に,暴力への潜在的態度が暴力的認知や暴力行為に影響するかどうかを検討することを目的に実験を行った。具体的には,2018年度は,当初の計画通り,男子大学生40名に対して,暴力IAT並びに怒り喚起課題,認知課題(記憶課題),そして暴力行為の指標としてブードゥードール課題を行った。これらの手続きに従って,暴力概念を活性化させた上で,課題によって認知資源が制限されている場合に,暴力への潜在的態度の影響が暴力的認知や暴力行為に生じ得るのかどうかを実験的に検証した。結果的に,認知的負荷の有無並びに暴力への潜在的態度によって,暴力的認知や暴力行為が助長されるという影響過程は見られなかった。なお,これらに加えて,2018年度には補足的にWeb調査を実施し,再度,暴力への顕在的影響要因を親密な関係での暴力に限定して探索的に調査した。結果的に,愛着不安や支配欲求などの顕在的な影響要因が明らかとなった。 研究期間全体を通じて,暴力への潜在的態度の測定手法を確立し,過去の暴力経験の有無によって,現在の暴力への潜在的態度のネガティブさに差異が見られる点までを明らかにすることができた。今後に関しては,暴力への潜在的態度が将来の暴力行為や攻撃行動を予測できるかどうか,時系列を加味した上で,より詳細に検討することが必要である。
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