研究課題/領域番号 |
16K17300
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
村山 綾 近畿大学, 国際学部, 講師 (10609936)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 時間認識 / 公正推論 / 日米比較 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、公正推論(他者に起こる不運に公正さを求めるがために行われる、時に非合理的な推論)のしやすさに、個人の時間の捉え方が関連するという仮説を検証することである。 平成28年度は、時間意識に関わる既存尺度をまとめ、日米で時間認識に関する自由記述調査を実施し、文化によって時間に対する捉え方が異なる可能性について検討した。日本人では、時間に対するイメージについて、「早い」「有限」「あっという間に過ぎていく」のような、時間がたつのを早く感じていると思われる記述が最も多くみられた。それ以外には、「大切」「貴重」「宝」のような記述も多くみられた。「流れていくもの」「流れ」といった記述もいくつかあったが、このようなイメージはアメリカ人を対象とした調査では見られず、日本特有の時間に対するイメージなのかもしれない。また、過去・現在・未来の中で、自分にとって何が一番重要であるかを尋ねた質問については、日米いずれも現在が最も選択されたが、アメリカ人の方が日本人よりも未来が重要であると回答した割合が多かった。 不運な目にあった人物に対する内在的公正推論(例:事故にあったのはその人物が悪い人だからだ)の日米比較調査も実施した。日本人の方がアメリカ人よりも内在的公正推論を行いやすいことが示された。アメリカ人の場合は、宗教心が強いほどこのような推論を行う傾向が強かったが、日本人では宗教心の影響は見られなった。時間認識との関係については、現在データ分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は所属先が変わり、当初は研究環境を整える作業に時間がとられたが、データ収集に関してはおおむね予定通りに計画を進めることができた。現在は得られたデータの分析を進めつつ、平成29年度に計画しているデータ収集の準備を行っており、全体として、計画通りに研究が進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、得られた結果を踏まえて2つの研究を実施する予定である。第一に、タイムプレッシャー課題を用いて、時間的焦燥感を実験的に操作し、それによって公正推論に影響があるかどうかを検討する。仮説は、タイムプレッシャー課題により時間的焦燥感が強まると、究極的公正世界推論をしにくくなるというものである。第二に、年齢によって時間の捉え方に違いがあり、結果として究極的公正推論のしやすさに差が生じる可能性について、若者と高齢者のデータの比較を通して検討する。高齢者は自分自身の人生に残された時間が短く、若者と比較して時間的焦燥感が強かったり、自分自身に対する将来への展望持ちにくいかもしれない。もしそのような傾向があるとしたら、結果として、高齢者は若者よりも究極的公正推論を行いにくくなると考えられる。以上の可能性について、実験研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
日米比較調査について、完全な業者委託ではなく、参加者プールのみを利用するという新しいサービス(Prolific)を利用したため、当初よりも調査に使用する合計金額を抑えることができた。一方で、所属先が変わり、研究環境を整えることに時間がかかったため、予定した物品購入等がまだできていない状況である。そのため、平成28年度に予定した支出をすべて行うことができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の予算と合わせて、まだ購入ができていない物品を早めに発注する。また、予定している2つの実験研究に関しては、参加者人数の増員や、参加者の属性の事前スクリーニングなどに費用をあて、より生態学的妥当性の高いデータ収集が行えるようにする予定である。
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