研究課題/領域番号 |
16K17303
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研究機関 | 独立行政法人国際協力機構(研究所) |
研究代表者 |
大貫 真友子 独立行政法人国際協力機構(研究所), 研究所, 研究員 (60771912)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 集団間葛藤 / 集団間接触 / 平和構築 / 暴力的紛争 / 民族虐殺 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、暴力的紛争を経験したルワンダ人を対象とした、障害者職業訓練プロジェクトをとおして、どのような集団間接触が融和に繋がり得るかを明らかにすることである。
29年度の主な研究実績は2つの研究発表に集約される。1つは、10月8日の日本心理学会公開シンポジウム「紛争を考える2」における登壇で、本研究の対象とするルワンダにおける障害者職業訓練プロジェクトの融和効果について、社会心理学の集団間接触理論や近年の紛争研究を踏まえて分析・議論した。さらには、貧困が深刻なコミュニティにおける事象であることから、より就労などに伴う経済面での安定が個人のエンパワメントやソーシャルキャピタルなどと密接に関連しており、それらが重なって他集団への寛容さに繋がり得るといった、より複合的な融和のモデルについて提唱した。反響としては、ルワンダと言うと悲惨な虐殺のイメージが強いが、この職業訓練プロジェクトに見られるようなポジティブな環境で和平が保たれている様子が分かって良かったなどと言ったお言葉もいただき、一定の手ごたえが感じられた。
2つ目は、11月25日の国際開発学会大28回全国大会での共同発表で、平和構築専門の国際協力専門員と7月に実施した定点観測調査の報告を行ったものである。その他国際協力機構の専門家が発表したパネルセッションで、様々な紛争影響国における国際支援の共通の問題意識について、実務経験豊富な研究者や専門家を交えて議論し意見交換をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究実施に当たって、ルワンダ現地事務所における人事の変動、インパクト評価調査の遅延、当方の他業務量との調整など多岐にわたる理由により、新たに現地でデータ収集を行う形での研究実施を断念した。その分、既存のデータないしJICA事業の一環として収集する調査データを最大限活用することによって成果を上げる方針で実施している。具体的には、分析対象とするJICAの職業訓練プロジェクトのインパクト評価で収集した量的データと定点観測調査で収集している質的データである。
インパクト評価においては、追加調査で得たデータを接合後、再度アウトカム指標の分析を行っている。融和関連の指標を主に、その他スティグマ、エンパワメント等、非経済的指標を分担している。主な結果は内部にて報告済。国際協力専門員が実施する、当該職業訓練プロジェクトの定点観測においては、第2回目の調査に引き続き、第3回目の現地調査(2017年7月)に参加した。インパクト評価の量的データを基にしたインタビュー対象者の選定やインタビュー内容や手法の選定・調整を含む調査事前準備から、現地でのインタビュー実施まで、協働で作業した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の国際協力専門員が実施する定点観測第4回目調査の準備作業を引き続き行う。それと同時に、一連の定点観測で得られた調査結果を活用して、共著で日本語書籍論文執筆を行う(日本心理学会企画)。引き続き、インパクト評価で得たデータの解析も続け、英語論文の執筆も進める。
現地に研究成果をフィードバックし意見交換ないし追加の簡易な情報収集をする目的で、英語の論文か報告書がまとまった段階で現地へ渡航し関係者を訪問する予定。その他国内外の学会においても発表し、意見交換を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、研究実施計画の変更に伴い支出が無かった為。
使用計画においては、非常勤助手雇用(週2回6か月ほど)に822千円、物品費に400千円、ルワンダ渡航にまつわる旅費に808千円と現地通訳雇用に245千円を想定している。全体として研究予算執行が遅れているため、科研費期間延長承認申請を検討中。
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