研究課題/領域番号 |
16K17305
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宇佐美 慧 筑波大学, 人間系, 准教授 (20735394)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 縦断データ / 因果推論 / 交差遅延モデル / 発達 / 分類 / 構造方程式モデル決定木 |
研究実績の概要 |
複数の個人から継続的に測定したデータを縦断データ(longitudinal data)と呼ぶ。縦断データを通して,測定値がどう変化したかやその個人差,また変化の因果関係を検証できる。本申請課題では,縦断データ分析の際のモデルの誤設定の問題に関する研究として,1,ランダム時間効果を考慮した縦断データ分析法の提案.2,変数間の因果関係を推論するための一般化クロスラグモデルの提案.3,構造方程式モデル決定木(SEM Tree)の性能評価検証と,頑健なモデル設定法の提案,4,教育・発達心理学の縦断データへの提案手法の応用とモデルの誤設定への統合的対処法の提案,を進める。 具体的に,研究 1では,例えば真夏日にスポーツ大会を行えば選手全体が本来の力を発揮できないように,あるイベントが全ての個人に共通して影響する場合データの独立性が失われ, 測定にバイアスを与える.これをランダム時間効果と言う。本研究では,ランダム時間効果が推定結果に与える影響度の理論値を導出するとともに,その影響を適切に考慮できる統計モデルを提案した。そして,提案モデルの有効性をシミュレーションや実際のデータを用いて検証した。 研究 2は,クロスラグモデルと呼ばれる複数の変数の変化の因果関係を推測するために広く利用されている統計モデルにかかわるものである。本研究では,クロスラグモデルに該当する様々な統計モデル群の異同を明確化し,全ての方法を包含する一般化クロスラグモデルの枠組を提案し,特定のクロスラグモデルの利用の偏重を緩和するとともに,より柔軟性の高い統計モデルの設定のあり方を提案する。 28年度では,1,2の理論研究において論文化まで進めることができた。研究3についても,その基礎となるシミュレーションプログラムを完成させ論文化ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り,研究1,2を中心に論文化まで進めることができたことに加えて,研究3についても進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究1については継続して、新たに別の分析モデルを複数提案するとともに,28 年度と同様の設定条件の下でタイプエラー等の,ランダム時間効果による影響の改善の水準を検証する.さらに各提案モデルの統計的性質(e.g., 推定値の標準誤差)についても比較検討する。研究2については,論文の改稿等の対応を引き続き進める。 特に次年度は研究3を中心に進め,また応用研究に該当する研究4も進める。研究3については,特に,特定の変化のパタンの形状を仮定しないモデルを考え,その際にモデルの誤設定が与えるSEM Treeの分類精度への影響を検証する。具体的には,サンプルサイズ,測定時点数,独立変数の測定の信頼性,テンプレートモデルの複雑性(母数の数),独立変数の数,真のグループ数などの実験条件を操作して大規模なシミュレーションデータを発生させ,これら実験要因とSEM Treeの分類精度の関係を検証する。
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