本研究は、将来、学校において、1人1台タブレット型コンピュータをもつことが普通になることを見越して、学級内で起きると想定されるタブレットを用いたネットいじめに対応する包括的プログラムを開発することが目的であった。 本年度は、1.学級にいじめがあるという条件(実験群)において、被害者の性別を、男子に想定した実験を実施し、2.そして、被害者が男子の条件(実験群)といじめのない条件(統制群)の比較を行った。3.また、平成29年度に実施した学級にいじめがないという条件(統制群)の実験で得られたデータと、平成30年度に実施した学級にいじめがあるという条件(実験群)において、被害者の性別を女子に設定した実験で得られたデータを比較検討した分析結果を日本カウンセリング学会第52回大会で発表した。4.さらに、これらの知見を踏まえた学校での対応策について、日本教育心理学会第61回総会大会準備委員会シンポジウム「コミュニケーションに潜むいじめのリスク」の中で「ネットコミュニケーションに潜むリスク」という演題で発表を行った。5.これまで得られたデータについて、コミュニケーションのやりとりによるネットワークという視点ではなく、やりとりの質的な内容に関するテキストマイニングによる検討も実施した。 2については、いじめのない条件と比較して、いじめのターゲットと設定されていた男子は、コミュニケーション頻度が有意に低いということは示されなかった。3および4の発表を通じて、いじめという条件よりも、被害者の特徴がコミュニケーションに反映されやすいことが示唆された。5については、いじめ被害者がいる条件であっても、被害者への攻撃行動は極めて少なく、統制群との違いを見出すことはできなかった。
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