本年度は,予定していた研究3「より状況的な他者との学習における動機づけ調整と学習行動・結果とのダイナミックな関連」を実施した。具体的には,他大学の研究者にも協力を依頼し,2つの大学の授業において,大学生の実際の協同学習の様子を録音・録画した。また,協同学習の前後には,質問紙調査を行い,動機づけ調整傾向,協同学習中の状況的動機づけ,行動的エンゲージメント,感情的エンゲージメント,協同学習中の動機づけ調整の工夫(自由記述)などを尋ねた。 分析の結果,動機づけ調整傾向の高い大学生は,協同学習の後半でも,状況的動機づけを低下させることなく,比較的高く維持している可能性が示された。また,動機づけ調整傾向の高い大学生は,今回の協同学習中により質の高い具体的な動機づけ調整の工夫を行っていた可能性が示された。そこで次に,動機づけ調整の工夫として記述数の多かった「話題を変える」と「意見を出す」に着目し,協同学習中のそれらに関する発話数と動機づけ調整傾向との関連を検討したところ,関連が見れらた。これらの研究成果については,学会で発表を行い,論文化する予定である。 さらに本年度は,去年度実施した研究について,国際学会および国内学会で成果を発表した。また,1つの論文が学会誌に採択され,2つを紀要論文として発表した。このように,研究成果を積極的に発信することができた。 協同学習に着目した動機づけ調整研究はこれまでほとんど行われてこなかったが,本研究によってその動機づけ調整プロセスの一端を明らかにすることができた。これは,自己調整学習研究の発展および協同学習の支援においても重要な意義を持つと考えられる。
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