研究課題
1歳半から始まるふり遊びは,そのなかでも「見立て遊び」が,発達の重要な概念として位置づけられている(e.g., Piaget,1945)。実際に1歳半のふり遊びが,その後の子どもの心の発達に重要であるという知見も示されている(e.g., Moriguchi, Ban et al, 2017)。例えば,玩具を車に見立てて遊ぶとき,玩具は車の代用品であり,車を表すシンボルとなる。見立て遊びにおいて,シンボル(玩具)の見た目が,子どもの想像力を促す鍵となる。2016年度は,見立て遊びにおけるシンボル(以下,玩具)に着目し,玩具の見た目を操作することにより,乳幼児の想像力を促す玩具について検討する前段階として,乳幼児期の子どもが好むふり遊びの玩具について検討を行った。実際には,形は同じだが,見た目が異なる玩具(色が派手な玩具,木の玩具,本物のフライパン)の3種類を用意し,独立変数を見た目および子どもの年齢(1歳半,2歳,2歳半)とした3×3の被験者間デザインの実験を行った。その結果,乳幼児期の子どものなかでも,1歳半児は色が派手な玩具を多く好んだが,2歳半児になると色が派手な玩具よりも本物を好むようになることが明らかとなった。これまでのふり遊び研究では,子どもと大人のやりとりに焦点が当てられてきた。一方,ふり遊びに不可欠な第三項としての玩具の性質が,子どものふり遊びに与える影響に注目した研究は未だ無い。今後は,ふり遊びで子どもが用いる玩具の,多義性や見た目との類似度に着目した検討を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
乳幼児の想像力を促す玩具について検討する前段階として,現在までに乳幼児期(1歳半,2歳,2歳半)において,発達によって玩具の好みが異なるという新たな知見が得られた。
子どもの想像力を促す玩具について,例えば,車にも食べ物にも見立てることが可能な高い多義性を持つ玩具は,指示物との見た目の類似性が低いため,想像と結び付けることが困難となることが予想される。その一方で,多義性が低く指示物との類似性が高い玩具では,想像を媒介せずとも見立てることが出来てしまうため,想像力を促すことが可能性が低いことが予想される。今後は,見立て遊びにおける玩具の多義性および指示物との類似性について検討を行う。さらにASD児のふり遊びについても検討を進めていく。
分析に予定していたパソコン,ディスプレイを2016年度に購入しなかったため,その分の予算を繰り越した。また,謝金についても,2016年度は実験期間に風邪等で実験のキャンセルが多く見られたため,繰越を行う。
分析用パソコン,ディスプレイについては2017年度に購入し,データ解析および分析に使用する。また,謝金についても2017年度に新たに参加者募集を行い,謝金として使用する予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
European Journal of Developmental Psychology
巻: online ページ: 1-12
doi:10.1080/17405629.2017.1280022
Neuroscience
巻: 348 ページ: 288-301
doi: 10.1016/j.neuroscience.2017.02.031
Frontier in Psychology
巻: 7 ページ: 1717
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