Piaget(1945)は,ふり遊びのなかでも「見立て遊び」を,発達の重要な概念として位置づけている。見立て遊びのなかでも特に,乳幼児期のふり遊びの特徴として,玩具を用いることが挙げられる。そこで本研究ではふり遊びにおける玩具に注目した。 乳幼児は,様々なモノや玩具を用いてままごと遊びを展開するが,発達に応じて使用する玩具の好みは変化するのであろうか。例えば,2歳以降,乳幼児は本物に近い玩具を好むようになることが指摘されている(坂本,2013)。このように,発達によって乳幼児が好む玩具が異なる可能性が示唆される。そこで本研究では,見立て遊び場面において,乳幼児がどのような玩具を好むのか検討を行った。玩具は遊びの場を作るものであり,想像力は子どもが玩具や人と関わる過程で生まれることが指摘されている(坂本,2013)。そのため,本研究によって子どもの想像力を促すための,発達に適した玩具を明らかにすることが可能となる。 1歳半から2歳半の乳幼児に対して,ふり遊びにおける玩具を3種類(色の派手なおままごと用の玩具,木製のおままごと用玩具,本物の食器)提示し,乳幼児がどれを選択するかを検討した。その結果,2歳児では,「本物の食器」よりも「色が派手なおままごと用玩具」,「木製のおままごと用玩具」を選択した割合が高いことが示された。しかし,2歳半児になると,3種類の玩具の選択割合に差が見られなかった。また,年齢を統制変数としたうえで,玩具を用いて遊んだ時間(秒)を比較したところ,「本物の食器」を選択した群が最も長いことが示された。この結果は,先行研究を支持するものであり,年齢の発達とともに乳幼児が好む玩具が異なること,さらには見た目が派手な作りこまれた玩具を用いるよりも「本物の食器」のような見た目がシンプルなものを用いたほうが,ふり遊びが長く展開される可能性が示された。
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