研究実績の概要 |
向社会的な感情を抑制し,反社会的行動を引き起こす認知の歪みのメカニズムとしてBandura (1996, 2002)が提唱したSelective Moral Disengagement (選択的道徳不活性化:以下SMD)が国内外で注目されている。SMDは,青少年の反社会的行動や攻撃行動との関連が様々な研究で認められている(Barchia & Bussey , 2011 ; Gini, Pozzoli, & Hymel, 2014)。いじめにおいてこうした認知の歪みは,いじめ加害者の罪悪感や恥などの感情を抑制し,いじめを促進する役割を果たしていると考えられる。 そこで本研究では,いじめの加害者,被害者,傍観者,仲裁者の認知の歪みについて明らかにし,その働きについて検討することを目的としている。本年度は,2014年に定時制高校を対象に行った調査結果をまとめ,日本社会心理学会第57回大会において発表した。この研究では,高校生のいじめの役割別行動と反社会的行動に関する認知の歪み,いじめに関する認知の歪みとの関連についての検証を行った。その結果,男女ともに反社会的行動に関する認知の歪みは,いじめに関する認知の歪みを高めることで間接的にいじめへの消極的関与,直接的いじめ加害行動および被害経験を高める影響を与えていた。 また,中学生を対象にいじめの役割別行動と認知の歪みに関する質問紙調査を行った。結果のまとめおよび発表は次年度に行う予定である。
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