研究課題
反社会的行動を引き起こす認知のゆがみのメカニズムである選択的道徳不活性化は,青少年の反社会的行動やいじめと関連することが海外の様々な研究で認められている(e,g., Barchia & Bussey , 2011 ; Gini, Pozzoli, & Hymel, 2014)。本研究では、日本の学校文化を考慮したいじめに関する認知の歪みを測定する尺度を作成し、いじめの役割別行動やその他の要因との関連を明らかにすることで、いじめを防止するための知見を学校現場に提供することを目的としている。現在、中学校2校において3年間(計5回)の縦断調査を継続実施中である。本年度は中学校1年生時におけるいじめ経験と認知の歪みとの関連についてのデータを分析し、その研究結果を2017年度の日本教育心理学会第59回総会にて発表した。具体的な研究結果は以下の通りである。(1)中学生の認知の歪みは、自己中心性と道徳的正当化、責任転嫁に分類された。(2)いじめの加害経験といじめの傍観経験の多い生徒は、いじめの経験が無い生徒と比較して、自己中心性、道徳的正当化、責任転嫁のすべての認知の歪みが高いことが明らかにされた。(3)性差は認められなかった。これらの結果から、認知のゆがみはいじめ経験と関連があり、いじめの加害者や傍観者はいじめに関する認知を歪ませることで罪悪感などを軽減させている可能性があると考えられる。次年度は縦断調査の結果を分析することで、いじめに関する認知の歪みとその他の要因との関連についても検討する。
3: やや遅れている
本年度途中からの産前・産後休暇および育児休暇の取得により、研究が一時中断しているため。
育児休暇からの復帰後に、中学校での調査およびデータ入力、分析を再開する予定である。必要であれば研究期間の延長も検討したい。
本年度途中から産前産後休暇および育児休暇を取得し、研究が中断したため。職場復帰後に研究を開始し、データ入力や学会発表等に使用する予定である。
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子どもの心と学校臨床
巻: 18 ページ: 81-89
1884-0310