研究実績の概要 |
近年、海外の先行研究では青少年の反社会的行動に児童・生徒の認知の歪みが関連することが明らかにされている。本研究は中学生の認知の歪みが,同時点およびその後のいじめの加害行動とどのように関連するのかを検討することが主な目的である。これまでに,公立中学校2校の305名(男子110名, 女子98名)を対象とし、生徒が中学校一年生である2016年12月(Time1)から中学校三年生時の2018年6月(Time5)まで5回に分けて縦断的質問紙調査を実施した。 質問紙の構成は,(a) 認知の歪み:Caprara, Pastorelli, & Bandura (1995)の選択的道徳不活性化(SMD)を参考に中学校教員4名と話し合った上で中学生用に項目を作成し,5件法で質問したもの(18項目)と(b) いじめの役割行動(BSR):Self-reported behaviors during bullying episodes (Pozzoli & Gini, 2010)を参考にいじめの加害行動・傍観行動・制止行動・被害行動を中学校で過去6カ月間にどの程度経験したのかを5件法で質問したもの(5項目)を中心とした。 今年度は収集した3年間5時点のデータを整理し,グアム大学のいじめ研究者に助言を得ながら分析方法について繰り返し検討を行った。日本社会心理学会第60回大会において,本研究の途中経過として中学校一年生時(12月)の認知の歪みが中学校二年生時(6月)のいじめの加害経験とどのように関連するのかについての発表を行った。認知の歪みの自己中心性は男女ともに短期的には直接的に,長期的には間接的にいじめの加害経験を増加させることが明らかになった。
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