本研究では,高校中退における予防プログラムを「普遍的予防」「選択的予防」「指示的予防」に分類し,包括的な予防プログラムの開発を目的とした。具体的には,①中退の高リスク群をスクリーニングする尺度の標準化(選択的予防),②スクリーニング尺度の実施(選択的予防),③普遍的予防としての「学習スキル教育」の開発と効果測定(普遍的予防),④選択的予防と指示的予防の介入手続きの開発と効果測定である。 ①については,小栗(2018a)で6因子35項目で構成される尺度を作成し,「高校中退リスク評価尺度(RAS-HD:Risk Assessment Scale for High School Dropout)」と命名した。そして,信頼性の確認およびスクリーニング・テストとして最適なカットオフ値を算出した。さらに,小栗(2018b)では,当該尺度を標準化し,妥当性を検討した。その結果,高い予測的妥当性を有していることが確認された。 ②について,現在は調査・分析を終え,投稿論文を執筆中である。 ③については,小栗(2018c)で高校中退の普遍的予防のためのアナログ研究を行った。その結果,「目視・誤答反復学習スキル」の効果が最も高く,書字の流暢性が低い学習者にとっても有効な学習スキルであることが示された。小栗・大橋(2018)では,学習に困難を抱える高校生を対象として,流暢性に焦点を当てた英単語学習スキルを教示し,効果を確認した。 ④については,小栗・吉永(2019)と小栗・工藤(2019)において,事例研究を通して,連携による学校適応支援やキャリア支援の効果を検討した。 最後に,小栗(2019)では「高校中退に至る前に高校教師にできることは何か?:高校中退の問題と予防プログラムについて考える」と題して,包括的に予防プログラムについて紹介した。
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