研究課題/領域番号 |
16K17325
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
大里 絢子 弘前大学, 医学研究科, 助教 (80597162)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 保健師 / スクリーニング / 5歳児発達健診 / 3歳児健診 |
研究実績の概要 |
(1)直接観察可能なASD スクリーニング項目の抽出および(2)抽出項目の信頼性妥当性評価、運動評価項目の抽出・・・3歳児健診で発達スクリーニング導入のための予備調査として2017年1~3月に123名の3歳児に対してSDQ子どもの強さと困難さアンケート、SRS-2対人応答尺度、保健師による親へのPARS-TR短縮版を行い、使用するスクリーニングツールおよびカットオフ値の妥当性の検証を行った。その結果尺度の度数分布はSRS-2がスクリーニング基準となる48.5点以上は8.1%と偽陰性が多く、PARS-TRでは5点以上が17.1%と疑陽性が多く認められた。また統計解析(ロジステイック回帰及びROC分析)の結果、SRS-2とSDQの組み合わせが使用尺度として妥当であり、SRS-2はカットオフ値を下げて感度を挙げ、>43.5点(12.2%)とすることが統計学上妥当と判断した。また、自閉症スペクトラムに多く併存する発達性協調運動障害のスクリーニングであるMovement Assessment Battery for Children2(MABC-2)に影響を与える因子の探索を日本版感覚プロファイル、WISC-IV、日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査簡易版を用いて行った。その結果位置覚や筋緊張・耐久性などの感覚処理、言語理解や注意力、視覚認知などの認知機能の問題が協調運動機能に影響を与えていることを確認した。 (3)ASD 児およびその家族への介入・支援・・・A自閉症の診断を受けた児に対し、超早期療育であるEarly Start Denver Modelの認定セラピストのトレーニングを受けながら介入を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度も5歳児発達健診が継続され、SRS-2、SDQ、PARS-TR、WISC-IV、自閉症診断面接改訂版(ADI-R)、自閉症診断観察検査(ADOS)など自閉症スペクトラム障害(ASD)のスクリーニングを始めとするデータがさらに蓄積されている。また、3歳児健診においても予備調査を行い異なる年齢のデータが蓄積されているほか、保健師によるスクリーニングも導入された。平成30年度からは3歳児健診への発達健診が本格的に導入されている。 ASD児の介入・支援については自閉症を超早期から療育プログラムであるEarly Start Denver Model(ESDM)認定セラピストのトレーニングを受け、現在は資格取得の最終ステップに来ている。
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今後の研究の推進方策 |
ADOS、ADI-R、MABC-2などのスクリーニングツールを解析し、保健師が直接観察して感度良くASDを含む発達障害の症状を抽出することが可能な因子を検索する。 保健師のPARS-TRの特異度をあげるべく保健師を対象とした研修、講習、意見交換を行う。 ESDMを用いてASD診断を受けた児の介入、支援を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)使用した検査用具はすでにある用具を使用したため新たに購入する必要がなかった。また健診など地域でのデータ収集を優先したため国内、または国際学会発表などに行く回数が少なかった。 (使用計画)蓄積データを解析し、その時点で得られた解析結果を発信するために学会発表を多く行う、さらに必要が応じた検査のスキル習得のための研修に参加する、データ解析に必要な統計ソフト等の購入に用いる、研究を円滑に遂行するための人員を雇用する。
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