精神病の発症リスク状態であるARMS(At-Ridk Mental State)への治療として認知行動療法の有効性が確認されている。しかし、日本における医療現場の現状では、定型的な人行動療法を施行できるセラピストは限られているため、実際に認知行動療法を受けることのできる患者数は制限されざるを得ない。 統合失調症への治療効果が実証されているプログラムとしては、メタ認知トレーニング(MCT)が開発されている。このMCTは構造化したプログラムを持ち、実施マニュアルと教材が準備されているため、定型的な認知行動療法に慣れていない心理士、作業療法士、看護師など様々な職種でも実施可能である。MCTは日本国内でも精神病への有用なプログラムとして普及が拡大しており、精神病に対して簡易的な認知行動療法が提供される機会は増加しつつあると言える。 MCTは陽性症状および妄想に対する効果が報告されているため、類似の症状を持つARMSにも効果的であることが予測される。だが、現在までのところ、MCTをARMSに適用した研究はこれまでに報告されておらず、ARMSに対するMCTの実施可能性についての検証は行われていない。そこで、本研究ではMCTをARMSに適用することで、その効果(efficacy)、受容性(acceptability)、安全性を調査し、ARMSに対するMCTの実施可能性(feasibility)を明らかにすることを目的としている。 一昨年度までに、精神病に対する個人向けMCTのマニュアルを改定を加えて、ARMS版個人MCTマニュアルを作成し、予備介入を開始する同時に、東北大学医学部倫理委員会に申請を行い、本試験介入の開始準備を整えた。 昨年度は予備介入を終了し、倫理委員会の承認の得られた7月より本試験を開始し、対象者の募集を継続的に行っていた。
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