研究課題/領域番号 |
16K17334
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
古川 洋和 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 講師 (60507672)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 認知行動療法 / 歯科恐怖症 |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究目的は,インターネットを利用したオンライン認知行動療法に関する先行研究の展望によって,有効性が確認されたデバイス(パーソナルコンピュータ)と介入要素(エクスポージャー)を用いて,歯科恐怖症に対するオンライン認知行動療法を作成し,その適用可能性を検討することであった。具体的には,歯科治療に対する強い恐怖感を抱えた対象者が所有するパーソナルコンピュータ上において歯科治療に関する映像ならびに音刺激が提示される介入プロトコルを作成し,作成した介入プロトコルの適用可能性を検討した。 Modified Dental Anxiety Scale日本語版(以下,MDAS-J:古川・穂坂,2010)の得点が19点を超える4名の対象者が所有するパーソナルコンピュータ上において歯科治療に関する映像ならびに音刺激が提示される4セッションの介入プロトコルを実施した結果,4名ともMDAS-Jの得点が介入前より低減し,歯科治療に関する映像ならびに音刺激提示中の心拍数が介入前より低減した。また,4セッションの介入プロトコルから脱落した対象者はいなかった(完遂率=100%)。 平成29年度に実施した研究の成果から,対象者が所有するパーソナルコンピュータ上において歯科治療に関する映像ならびに音刺激が提示される4セッションの介入プロトコルは,歯科治療に対する恐怖感を低減できるうえに,脱落率が低いことが明らかにされた。今後は,実際に歯科受診行動を促進できるか検討を行う必要があるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究目的は,歯科治療に対する強い恐怖感を抱えた対象者が所有するパーソナルコンピュータ上において歯科治療に関する映像ならびに音刺激が提示される介入プロトコルを作成し,作成した介入プロトコルの適用可能性を検討することであった。 平成29年度においては,Modified Dental Anxiety Scale日本語版(以下,MDAS-J:古川・穂坂,2010)の得点が19点を超える4名の対象者が所有するパーソナルコンピュータ上において歯科治療に関する映像ならびに音刺激が提示される4セッションの介入プロトコルを実施した結果,4名ともMDAS-Jの得点が介入前より低減し,歯科治療に関する映像ならびに音刺激提示中の心拍数が介入前より低減した。また,4セッションの介入プロトコルから脱落した対象者はいなかった(完遂率=100%)。 平成29年度に実施した研究の結果,対象者が所有するパーソナルコンピュータ上において歯科治療に関する映像ならびに音刺激が提示される4セッションの介入プロトコルは,歯科治療に対する恐怖感を低減できるうえに,脱落率が低いことが明らかにされた。したがって,当初の目的である「歯科恐怖症に対するインターネットを利用したオンライン認知行動療法の適用可能性」の検討は達成され,研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,前年度に作成されたインターネットを利用したオンライン認知行動療法の効果を無作為化比較試験によって,実験的に検討する。具体的には,以下のとおりである。 対象者:(1)介入群:DSM-5(米国精神医学会,2013)における限局性恐怖症の診断基準を満たす歯科恐怖症患者10名で,インターネットを利用したオンライン認知行動療法による介入が行われる群および(2)ウェイティングリスト統制群:DSM-5(米国精神医学会,2013)における限局性恐怖症の診断基準を満たす歯科恐怖症患者10名で,介入開始前のウェイティングリスト登録者の群を対象とする。 方 法:研究デザインとしてはランダム化比較試験を採用し,各群の対象者に対して,介入前後の病態・症状について,①歯科治療に対する不安・恐怖の強度,②歯科治療に対する非機能的認知尺度,③歯科治療に対する不安・恐怖への対処方略尺度等を指標として介入効果ならびに認知行動的変数の媒介効果に関する検討を行う。 倫理的配慮:研究の実施については,申請者の所属機関から承認を受けた後に実施する。また,すべての対象者には,当該研究の目的,意義,方法,研究対象者に生じる負担,予測される結果(リスクおよび利益),個人情報の保護について書面による十分な説明が行われ,承諾書への署名による同意が得られたうえで研究を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ収集を委託せずに研究者自身が行ったため謝金が発生しなかった分、次年度使用額が生じた。次年度はランダム化比較試験を実施するため複雑なデータ処理等の業務に使用する予定である。
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