平成30年度の研究目的は,インターネットを利用したオンライン認知行動療法の効果をランダム化比較試験によって検証することであった。具体的には,前年度に作成したパーソナルコンピュータを利用したオンラインでのエクスポージャーが歯科恐怖症の改善に有効であるかどうか検討した。 Modified Dental Anxiety Scale日本語版(以下,MDAS-J:古川・穂坂,2010)の得点が19点を超える7名の対象者を介入群と対照群にランダムに振り分け,介入群に割り振られた対象者は,自身が所有するパーソナルコンピュータ上において歯科治療に関する映像ならびに音刺激が提示される4セッションの介入プロトコルが提供された。介入期間終了後において,介入群と対照群のMDAS-Jの得点を比較した結果,介入群の歯科治療に関する映像ならびに音刺激提示中の心拍数は対照群よりも低いことが明らかにされた(P=0.02)。また,介入群において,4セッションの介入プロトコルから脱落した対象者はいなかった(完遂率=100%)。しかしながら,介入群の対象者のうち,実際に歯科受診に至った者は認められなかった。 平成28年度から平成30年度に実施した研究の成果から,インターネットを利用したオンライン認知行動療法が歯科恐怖症の改善に有効であることが示された。今後は,本研究によって作成されたオンライン認知行動療法プロトコルが,歯科恐怖症の症状改善のみならず,歯科受診行動を促進できるか検討する必要がある。
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