最終年度は、仮想的ストレス状況下における潜在的・顕在的感情の変動が情動焦点型コーピングの使用に与える影響を検討した。 まず、大学院の講義のオリエンテーション内で同意を得られた研究対象者に対し、ベースライン(Time1:T1)の測定と、1ヶ月後に2回目(Time2: T2)の測定(いずれも潜在的・顕在的感情、情動焦点型コーピング)を行った。また、仮想的ストレス状況設定のために、2回目の測定の前には同講義内で予告のない小テストを5分程度実施した。すべての研究終了後には研究主旨などについて説明した。 T1と比較し、T2の各変数に変動が見られたかを確認するため、各変数について時期と性の2要因分散分析を行った。その結果、顕在的正感情は時期の主効果ならびに交互作用が有意であったが、それ以外の変数(コーピング、潜在的感情など)については有意な差が確認されなかった。次にT1の各感情がT2のコーピングへどのような影響を与えるのかを確認するため、T1の潜在的あるいは顕在的正負感情を独立変数、T2の各コーピング変数を従属変数として重回帰分析を行った。その結果、T1における潜在的負感情の高さが、T2の感情表出コーピングを低める結果を確認した。なお、T2からT1の各感情の差が、T2でのコーピングに与える影響も同様に確認したが、有意な回帰係数は確認されなかった。 本研究では、一部潜在的感情がコーピングに与える影響が確認されたものの、各変数においてT1とT2との間に有意な差がほとんど確認されなかったことから、その介入操作が上手くできていない可能性があった。また、今回は介入群のみの検証であったが、本来であれば統制群も設定した上での検証を行う必要がある。今後はより検証制度を高め、追研究を実施したい。 そして研究全体を通じ、現時点で考え得る情動焦点型コーピングの機能的メカニズムに関するモデルを提唱した。
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