本研究は,児童におけるメンタルヘルスの問題を予防することを目的としたストレスマネジメント研究に取り組んだ。従来までの子どものメンタルヘルスの予防介入は,症状や障害に対する治療技法と効果指標をそのまま適用しており,「治療から予防」への洗練が必要である。 研究1として,ユニバーサルレベルの予防介入に特化した,効果指標として保護要因(とくにレジリエンス)を測定するための尺度作成研究を行なった。小学校4~6年生,合計448名の児童を対象に調査を実施した。妥当性,信頼性を検証するために因子分析,α係数の算出等の統計解析を行なった。その結果,4因子,30項目が抽出された。α係数は0.92と十分な信頼性が示された。ユニバーサルレベルの予防介入に特化した保護要因を測定する尺度を整備することができた。 研究2として,児童に対するユニバーサルレベルの介入研究を行なった。学級における授業を活用して,認知行動的な介入技法からなるプログラムを全6回実施した。プログラム内容は,①心理教育:この授業の目的,きもちとは何か,②認知再構成法:ポジティブで柔軟性のある考え,③行動活性化:喜びを感じる活動 ,から構成された。効果測定として,保護要因(レジリエンス),ストレス反応,抑うつ(DSRS),自動思考に関して,介入の前後とフォローアップ測定(3ヶ月後)を行なった。結果から,各測定指標に効果が見られ,ユニバーサルレベルに特化した予防プログラムの効果が示された。
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