うつ病患者に対人関係療法を施行したところ、治療前後でうつ症状は有意に改善した。 29名の抑うつ障害群の患者に対する対人関係療法の前後において、対人過敏は有意に低下した。下位項目においても、臆病さを除く対人意識、分離不安、脆弱な内的自己の項目にて、有意に低下を認めた。一方で、治療前に対人過敏が高い症例に関しては、治療後も高い傾向にあった。 対人過敏をより効率的に低下させるため、対人過敏と関連する因子の調査を行ったところ、併存精神疾患の数と対人過敏が関連していた。一方で、併存精神疾患は養育体験とも関連しており、多変量解析を行うと、養育体験と併存精神疾患の数のみ有意な結果となった。この結果については英文雑誌に投稿中である。また、併存精神疾患に着目し、併存精神疾患のある慢性うつ病12名に対して対人関係療法を施行したところ、前後比較にて有意にうつ症状は改善していた。一方で、対人関係療法の適用可能な疾患の併存領域数が3つ以上(不安症、PTSD、摂食障害の全てを満たす)の症例に関しては、うつ症状の変化量が少ない傾向にあった。対人関係療法は疾患横断的に適用できる治療法であるものの、あまりに併存精神疾患が多いと改善しにくいことが示唆された。この結果は、2019年に開催された国際対人関係療法学会にて報告した。 また、薬剤治療抵抗因子である炎症や虐待歴などに関する調査も行った。 これらの結果から、今後は対人関係療法の治療効果と併存精神疾患の領域数に関して、サンプルサイズ を増やしたさらなる調査と、その結果に応じた対策を検討することが必要であると考えられた。
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