本研究は,乳児の感情表出に対する刺激の受け手の感情反応と乳児の感情状態に対する認知的解釈との関連を明らかにすることを目的とした。また,共感性と感情制御,育児不安と育児ストレス,養育経験と性差を感情反応と認知的解釈に生じる個人差要因として想定し検討し,親子間相互作用のモデルを提案することを目指した。 昨年度までの成果から,乳児の感情表出に対する感情反応及び認知的評価に関わる心理的変数を明らかにすることができなかった。今年度は本研究開始から昨年度までの研究成果を踏まえ,乳児が泣いている動画の修正を行った。乳児の動画については,大学生を対象に乳児が泣いている複数の動画を視聴してもらい,the Self-Assessment Manikinを用いて動画に登場する乳児の感情状態の強度を評価してもらった。その後,これらを解析し最も感情の強度が高いと判断された動画を新たに3つ作成した。 本年度においては,乳児動画の新たな作成とコンピュータを用いた視聴覚実験課題のためのプログラミング作成およびデモを実施した。また,従属変数となる生理指標・行動指標の検討を中心に行い,生理指標は心拍数,皮膚電位反応,筋電位,瞬目を対象とし,行動指標にはタッピングを測定することとした。そして,乳児の動画を視聴中および視聴前後の生理・行動指標の変化に対して個人のアタッチメント変数が与える影響を検討していく計画を立て,実験参加者の収集と実験実施を進めている。 本研究における補助事業期間は終了したが,今後もデータ収集を続行するとともに,この成果を国内外の学術学会等で発表していく予定である。
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