研究実績の概要 |
社交不安傾向の強い人は,あいまいな社交場面に対してネガティブに解釈する傾向がある。近年,社交不安者に特徴的な認知バイアスの修正に焦点を当てた介入である認知バイアス修正(CBM:Cognitive Bias Modification)が提案されている(Koster et al., 2009)。CBMは,社交不安者の2つの認知バイアス(脅威に対する注意,あいまいな状況に対するネガティブな解釈)を対象としたトレーニングプログラムで,具体的には,結末があいまいな社交場面のシナリオを呈示し,それを比較的ポジティブに解釈する課題を行い,状況をネガティブに解釈する傾向を低減させる。欧米では多くの実証研究が行われているが(Beard et al., 2008; Murphy et al., 2007; Holmes et al., 2006; Mobini et al., 2014),日本では,解釈バイアスを対象にしたCBMトレーニングプログラムを実施した例はほとんど見られない。そこで本研究では,社交不安傾向が高い大学生を対象に,CBMプログラムの開発および効果検証を目的とし,同時にCBMの効果を高める方法として,シナリオを鮮明にイメージさせた上で解釈バイアスを修正するプログラムの開発を目指す。早期に大学生の社交不安に介入することにより,学校適応の向上やその後の社会不適応(社会的ひきこもり,ニート等)の低減といった予防効果が期待できる。 平成29年度は,さらに先行研究を検討し,CBMを国内で実施した研究経験をもつ国内の研究者とコンタクトをとった。同意の上,国内の研究者が作成したCBMプログラムの研究利用について承諾を得て,本研究での利用可能性を検討し,プログラムの修正を行った。
|