研究実績の概要 |
社交不安傾向の強い人は,あいまいな社交場面に対してネガティブに解釈する傾向がある。本研究の目的は,社交不安者に特徴的な解釈バイアスの修正に焦点を当てた介入である認知バイアス修正法(以下,CBM-I)の作成および効果検討である。CBM-Iでは,結末があいまいな社交場面のシナリオを呈示し,それを比較的ポジティブに解釈する課題を行い,状況をネガティブに解釈する傾向を低減させる。欧米では多くの実証研究が行われているが(Beard et al., 2008),日本では,CBM-Iを実施した研究は限られている(寺島・高野, 2016)。 研究1では,あいまいな対人場面のシナリオの解釈とその結末の予測の実態を明らかにするために,大学生114名を対象に自由記述の質問紙調査を用い,状況とその予測される結末を分類した。KJ法によるカテゴリ分析の結果,対人状況は,「パフォーマンス」と「相互作用」に分類され,高社交不安者は,パフォーマンス状況で相手からの評価を予期する一方で失敗の予期は少なく,相互作用状況では,ネガティブな評価が多いが,相手が離れていく結末も予期しやすいこと,そして低社交不安者は,benignな結末の予測しやすいことが明らかになった。平成30年度はこの結果を日本心理学会第82回大会にて発表した。 研究2では,国内の研究者と連絡をとり,Lang, Blackwell ,Harmer, Davison & Holmes(2012)を元に作成した解釈バイアス修正課題(寺島・高野, 2016)の使用の許諾を得た。研究1で収集した刺激文と比較し,課題の妥当性を検討した上で,7日間にわたって,Webサイト上で2つのポジティブ解釈バイアス修正課題を実施した。介入群50名,待機群50名を目標として,現在研究を実施中であり,60名程度実施した。
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