研究課題/領域番号 |
16K17344
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
飯田 沙依亜 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (70581461)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 感情制御 / 実行系機能 |
研究実績の概要 |
現代社会を生きる上で感情制御は必要不可欠なスキルの1つとなっている。他方、感情制御が それほど容易ではないことは経験的にも明らかであろう。特に近年では、怒りや不安、焦りなど の不快感情の制御を苦手とする人々が多く報告されており、社会からも効果的な介入方法の開発 が期待されている。本研究ではこれまでの研究で得られた知見をもとに、実行系機能課題に取り組むだけというシンプルだが、エビデンスに基づいた新しい効果的な「予防的」感情制御方法の提案、更には感情制御能力訓練への応用可能性について検討する。 平成28年度は日常場面において実行系機能課題遂行による後続の感情消失が確認できるかを検討した。具体的には、Iida et al. (2009) の手続きを用いて、人前で話すことが苦手な学生を対象とし、スピーチ前の実行系機能課題遂行によって、スピーチ中の不安低減、スピーチ後の不安からの回復の促進が確認できるかを検討した。その結果、スピーチに対する苦手意識や不安が高すぎる実験参加者においては一部、不安が促進されたような結果も得られたが、概ねスピーチが苦手な学生を対象にした場合においても、事前に実行系機能課題を実施した群において、先行研究と同様、スピーチ中の不安低減、スピーチ後の不安からの回復の促進が主観報告、生理反応の両指標において確認された。このことから、日常生活においても近々不快な出来事が生じると予期できる場合には、実行系機能課題を遂行することによって、その不快感情の緩和に一定の効果が期待されると考えられる。この成果については、今後、学会や論文等で発表していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に予定されていた実験は、当初の計画通り、概ね仮説通りの結果を得て終了することができた。ただし、実験装置の購入や研究倫理審査等で実験開始までに予定以上に時間を要したため、実験終了時期が遅くなってしまい、平成28年度中に研究成果の公表までには至らなかった。これらの研究成果については平成29年度中に学会や論文等を通して公表していく予定である。また、大きなトラブルなく平成28年度に予定されていた実験をスムーズに終えられたことで、平成29年度に予定されている実験に向けて予備実験を実施する等、平成28年度中に準備を始めることもできた。これらの状況をふまえ、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、当初の計画通り、日常的な実行系機能課題の遂行によって感情制御能力の向上が確認できるかを検討する。具体的には、感情制御が苦手な学生を対象に4 ヶ月間、実行系機能課題に日常的に取り組んでもらい、その間の感情制御能力の変化について詳細に検討する。日常生活において不快な出来事は常に予測ができるわけではない。本実験によって実行系機能訓練によって感情制御能力を高め、日頃から不快な出来事に備えておける 可能性が示されるならば、実行系機能課題の遂行は「予防的」感情制御方略としての適用範囲を更に広げ、有用性を高める ことができるだろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、実験装置の購入や研究倫理審査等で実験開始までに予定以上に時間を要したため、実験終了時期が遅くなってしまい、平成28年度中に研究成果の公表までには至らなかった。そのため、当初予定していた学会発表のための旅費や論文の英文校閲費等を支出することができず、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に予定している、平成28年度の研究成果の公表のための学会発表のための旅費や論文の英文校閲費等の一部として充てる予定である。
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