研究課題
本年度では,睡眠の主観的・客観的評価と,種々のストレスや健康の自覚,心理社会的要因との関連性や,日常生活場面におけるバイオマーカーに与える影響について横断的に検討した。①大学生の主観的幸福感とシート型睡眠測定装置によって評価された睡眠時心拍数及び健康関連QOLとが関連する可能性が示された。ポジティブ感情,特に穏やかな気分や満足感は睡眠時心拍数の少なさと関連することが明らかにされている。また,ノンレム睡眠中は副交感神経活動が優位となり,心拍数や呼吸数,血圧や体温などの生理機能が低下することが報告されている。更に,睡眠時の心臓血管機能が良好な人ほど,健康関連QOLが良好であることが示されている。これらの知見から,主観的幸福感の自覚が強い人ほど睡眠時の心臓血管系機能の働きが良く,精神健康度や日常の社会活動が良好である可能性が示唆された。②シート型睡眠測定装置によって評価された大きな体動回数及び総体動数と,HPA系活動を反映する起床時コルチゾール反応(CAR)とには負の相関が認められた。さらに,大きな体動の発生頻度とSF-8で評価した日常役割機能や心の健康得点とに負の相関が認められた。しかしながら,小さな体動ではCARや心理指標と有意な関係は認められなかった。さらにOSA睡眠調査票MA版で評価される主観的睡眠評価と睡眠時の体動およびCARと有意な相関関係は認められなかった。本研究の結果から,睡眠中,特に深睡眠中に大きな体動の発生頻度の高い個人ほどCARが低下していることが示された。睡眠時の頻繁な体動は,入眠潜時の延長や中途覚醒の増加と関連し,睡眠の質を低下と関連することが報告されている。これらの知見から,睡眠時の大きく頻繁な体動は浅い眠りや中途覚醒の増加と関連すること,その結果として夜間のコルチゾール分泌が活性化し,起床時のコルチゾール分泌が低下することが示唆される。
2: おおむね順調に進展している
研究計画書に基づいて,横断研究を実施し,予定通り順調に遂行している。成果発表のために詳細な統計解析等が残ってはいるが,特に進展には問題ない。平成29年度も引き続き計画書に基づいて睡眠研究を実施し,成果を導き出していく予定である。
平成28年度の研究を継続して,睡眠の主観的・客観的評価と,種々のストレスや健康の自覚,心理社会的要因との関連性や,日常生活場面におけるバイオマーカーに与える影響について横断的に検討する。さらに平成29年度では,実験室場面でメンタルストレス・テストを負荷した際の心理生物学的ストレス反応(PNEI反応,主観的ストレス反応)や認知-行動的指標(作業成績や反応時間)に与える影響性が,主観的と客観的睡眠評価でいかに異なるかについての予備実験を行う。
研究計画書に基づき順調にかつ適切に使用していたが,振込手数料および発送料等を業者が負担したため少額の残金が生じた。
研究計画書に基づき,バイオロジカルマーカーの測定に用いる消耗品の購入等に充てる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件) 図書 (3件)
Brain & Development
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1016/j.braindev.2017.03.001
Journal of Health Psychology Research
Scientific Reports
巻: 6 ページ: -
10.1038/srep35553
ストレスマネジメント研究
巻: 12 ページ: 4-14