研究課題/領域番号 |
16K17351
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
岡村 尚昌 久留米大学, 高次脳疾患研究所, 講師 (00454918)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 睡眠の主観的評価 / 睡眠の客観的評価 / 急性ストレス / 唾液中バイオマーカー / 睡眠習慣の乱れ |
研究実績の概要 |
本研究では,大学生を対象に睡眠の主観的,客観的評価と,心理生理学的ストレス反応や心理社会的要因との関連性がいかに異なるかを検討する。加えて,主観的睡眠評価が生活の質(QOL)の指標として有用であることを明らかにすることを目的とする。 そこで,平成30年度では,実験室場面でメンタルストレス・テストを負荷した際の心理生物学的ストレス反応(唾液中PNEI反応,主観的ストレス反応)や認知-行動的指標(作業成績や反応時間)に与える影響性が,主観的と客観的睡眠評価でいかに異なるか検討した。 同意の得られた大学生を対象に,シート型睡眠測定装置による睡眠測定(一週間)が終了した当日に急性ストレス負荷実験を行った。実験室に入室した被験者には,15分間の順応期後,メンタルストレステスト(問題解決課題)を15分間負荷し30分間の回復期を設定し実験を終了した。課題前後と回復期(15分経過時と30分経過時)に唾液採取とストレス状態質問紙への記入を求めた。実験中は血圧と脈拍を非観血的に連続測定するとともに,PNEI反応を定量した。その結果,睡眠の主観的,客観的評価が,急性ストレス負荷した際の唾液中バイオマーカーや心臓血管系(血圧や心拍など)の反応性や回復性,さらには作業成績に与える影響が異なることが示された。 特に前年度の予備実験とは違い,睡眠の主観的評価よりも,シート型睡眠測定装置よって客観的に睡眠習慣が乱れていると評価された大学生(就寝および起床時間,睡眠時間が週に4回以上,2時間~4時間の範囲で変動する状態)では,実験室で急性ストレスを負荷した際の唾液中free-MHPG(ノルアドレナリンの最終代謝産物)やコルチゾールなどの反応性が低い可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に基づいて,実験室的研究を実施し,予定通り順調に遂行している。本年度も介入研究に加えて,平成30年度の研究を継続して行う予定でありに進展には問題ない。本年度は最終年度となるため,引き続き計画書に基づいて睡眠研究を実施し,成果を導き出していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に引き続き,急性ストレスを負荷した際の心理生物学的ストレス反応などのバイオマーカー(唾液中の精神神経内分泌免疫学的(PNEI)反応,心臓血管系反応)に及ぼす影響を実験的に検討することで,主観的・客観的睡眠評価と心理社会的要因とその背後にある生理心理的基礎課程との関連性の乖離を明らかにする。同時に,主観的睡眠評価が大学生のQOLの指標として有用であることも明らかにする。同時に,睡眠日誌を用いたセルフモニタリング法を通じて2ヶ月間取り組む介入群と質問紙のみを回答する対照群に無作為に分けて,主観的睡眠習慣の改善によって客観的に評価される睡眠効率だけでなく心身のQOLも改善することをバイオマーカーから実証的に検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験室研究への参加者募集が遅れたことにより,謝礼を次年度に支払うことになったため。
研究計画書に基づき,実験室研究および介入研究参加者への謝礼等に充てる。また,バイオロジカルマーカーの測定に用いる消耗品の購入等に充てる。
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