令和元年度では,平成30年度に引き続き実験室場面でメンタルストレス・テストを負荷した際の心理生物学的ストレス反応(唾液中PNEI反応,主観的ストレス反応)や認知-行動的指標(作業成績や反応時間)に与える影響性が,主観的及び客観的睡眠評価でいかに異なるか検討した(研究1)。さらに,睡眠習慣の改善や主観的幸福感の向上に着目した介入研究を行うための予備実験として,主観的幸福感がシート型睡眠測定装置による1夜間の客観的睡眠評価とOSA睡眠感調査票MA版(OSA-MA)による主観的睡眠評価とどのように関連するかを探索的に検討した。 研究1では,客観的に睡眠習慣が乱れていると評価された大学生(就寝および起床時間,睡眠時間が週に4回以上,2時間~4時間の範囲で変動する状態)では,実験室で急性ストレスを負荷した際の唾液中free-MHPG(ノルアドレナリンの最終代謝産物)やコルチゾールなどの反応性が低下していることが示された。 研究2では,健康な大学生24人(男性11人、女性13人、平均年齢22.4±2.1人)を対象にして,睡眠の主観的及び客観的評価と主観的幸福感との関連性を検討した。その結果、客観的に評価された睡眠効率が高い個人ほど主観的幸福感は高値であることが明らかとなった。さらに,有意傾向であるが,シート型睡眠測定装置によって評価された睡眠時の心拍数の低さが主観的幸福感の高さと関連することも示された。一方,OSA-MAによる主観的睡眠評価と主観的幸福感とにはそのような関連性が認められなかった。主観的幸福感が客観的に評価される睡眠の質と密接に関係していること,さらに,主観的幸福感と主観的及び客観的に評価された睡眠との関連性は異なることが示唆された。新型コロナウイルス感染拡大に伴い,当初予定していた介入研究は中断し,現在解析中である。
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